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裁判とAI-人間の判断の限界とAIの活用

袴田事件で、冤罪であるという判断となった。一度は死刑判決が確定しており、司法としてはよく反省をしなければならないし、冤罪であるという判断となったのには多くの人々の努力があったと思われる。

今回の事件では、味噌樽に長期間漬けた衣類の血の色が1つの問題になった。この点、生成AIに味噌樽に漬けた衣類の血の色を質問すると、変色の可能性を示唆する。

このことは、人間の血液にはヘモグロビンがあり、血液の赤い色はヘモグロビンの色であり、静脈血が動脈血よりも暗い色になることなどから、理科系のバックグラウンドのある人だと気づく可能性が高くなるかもしれない。実際の検証には、専門家の実験が必要であろうが、可能性に気づくことが重要と思われる。

近年AIの能力が急速に向上しており、裁判の証拠についておかしなところがないかのチェックの補助など、裁判においても、人間の判断を補うために、AIの活用が重要となっていくと思われる。

冤罪は起こってはならないことであるが、人間の営みである以上、人間の判断が間違っていることもありうる。冤罪は起こりうるという認識は、多くの弁護士が持っていると思われる。

冤罪は、一審、控訴審、上告審のいずれかで判断が食い違うような事件だけではなく、一審、控訴審、上告審ともに判断が同じ事件でも起こりうる。

司法においては、証拠から事実を認定する。証拠の構造がある事実を示している場合、一審、控訴審、上告審ともに判断が同様になりうる。いわゆるすわりのよい事実認定である。

しかし、「事実は小説より奇なり」というように、実際の事実がすわりのよいものとは限らない。

この点は、時間軸をひっくりかえして、事実認定(証拠から過去の事実を認定)から、未来予測(証拠から未来の事実を認定)を例にして考えてみる。未来予測は難しく、どんなに優秀な人間でも外すことはある。どう考えても予測不能なことも起こる。時間軸の向きは違うが、事実認定も、未来予測と同様、簡単なものではないと思われる。

人間の能力には限界がある。AIの能力が人間に比べて圧倒的に高い場合があることは、囲碁AIなどが示している。名人の棋力を超えた囲碁AIは、400年の囲碁の歴史の中で綺羅星のように並ぶ囲碁の天才たちの結論を、いとも簡単にひっくりかえしたのである(「守破離」の先にあるもの)。

このように、現在の人間の判断が、将来のAI(超知能)の時代に誤りであることが判明することはありうる。再審制度の改正については、将来のAI(超知能)による判断により冤罪等が救済されるように設計していく必要があると思われる。

人権保障の観点からも、裁判とAIの問題については、今後の検討が必要となると考えられる。また、刑事裁判だけではなく、民事裁判でも冤罪のような事件はありうる。超知能の時代の知的財産制度と共に、今後の超知能の時代の法制度の課題として考えていくべき問題と思われる。

執筆者

法律部アソシエイト 弁護士

岡本 義則 おかもと よしのり

[業務分野]

不正競争防止法 著作権法 企業法務 国際法務 知財一般 特許 意匠

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