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米国商標審判部 拒絶査定不服審判事件「In re Kohr Brothers, Inc.」121 USPQ2d 1793 (TTAB 2017)

 

商標意匠部弁理士 黒田 亮

審決日:2017年2月9日
出願人:Kohr Brothers, Inc.(米国バージニア州法人)

1.事件の概要
米国商標出願「CONY ISLAND BOARDWALK CUSTARD」(第30類)(使用意思ベース)の使用陳述手続で提出された使用見本が、ランハム法で認められる「指定商品に関連する表示物(display associated with the goods)」には当たらず単なる広告物であるという理由で出願が拒絶され、拒絶査定不服審判の審決においても拒絶が支持された事件。

2.経 緯
出願人は2011年9月23日付けで米国特許商標庁に以下の商標出願を行った。

商 標:CONY ISLAND BOARDWALK CUSTARD(標準文字)
(“CONY ISLAND” と “CUSTARD” の両語句は権利不要求(Disclaimed))
指定商品:Frozen desserts, namely, frozen custards(第30類)
出願ベース:使用意思(ランハム法1条(b))

この出願は登録許可通知を受け、2015年5月21日付けで使用陳述書(Statement of Use)が提出された。使用陳述書には使用見本(Specimen)として下記のような写真が添付された。

この写真は、出願人の店舗の壁にテープで貼られた封筒サイズの紙片に「CONY ISLAND/BOARDWALK CUSTARD」の語句と、カスタードコーン及び観覧車の両図形を記載した以下のような表示を写している。

審査官は、この使用見本は販売地点での「指定商品に関連する表示物」ではなく単なる広告物だと思われるという理由で、使用見本を最終的に認めず本件出願を拒絶した(法1条、45条)。
出願人はこの拒絶査定に対し2016年1月21日付けで不服審判を請求した。

3.審 決
1)争 点
本件出願の使用陳述書において提出された使用見本は、法45条における「指定商品に関連する表示物」(display associated with the goods)と認められるか

2)検 討
法1条は、取引において使用されている商標の所有者は出願書類及び取引上使用されている商標の見本を提出することによりその商標の主登録簿への登録を請求することができると規定する。また、法45条の規定では、商標は以下の場合に取引において使用されているとみなされる。

「(1)商品については、
(A)それがいかなる方法であれ、商品若しくはその容器若しくはそれに関連する表示物に、又はそれに添付されるタグ若しくはラベルに付され、又はその商品の性質上そのように付することができないときは、その商品若しくはその販売に関する書類に付され、かつ
(B)その商品が取引において販売されるかまたは輸送される場合」

45条は『それに関連する表示物』の語について定義しておらず、…審判部は、『表示物』だと主張された特定の使用が取引における使用を適切に示しているかどうかをケースバイケースで決定しなければならない。」(In re Shipley Co., Inc., 230USPQ 691, 692 (TTAB 1986))「単なる広告物は商標の使用を示すのに十分ではないと長年考えられてきた。」(In re Quantum Foods Inc., 94 USPQ2d 1375, 1379 (TTAB 2010))(Powermatics, Inc. v. Globe Roofing Prods. Co., 341 F.2d 127, 144 USPQ 430, 432 (CCPA1965) を引用して「単なる広告が…法上の商標の使用を構成していないことははっきり決着している。」Land’s End, Inc. v. Manbeck, 797 F. Supp. 511, 24 USPQ2d, 1314, 1316(E.D. Va. 1992)を引用して「使用見本は、単なる広告物である場合は登録には効果がない。」(商標規則2.56条も参照)

出願人は以下のように主張する。「目立つように掲示された表示は板張り遊歩道(Boardwalk)の屋台で売りに出している商品、すなわちフローズンカスタードの絵を描写している。」、「使用見本は板張り遊歩道の屋台で売りに出している商品に関連する表示物である。」、「商品であるフローズンカスタードは表示された使用見本に距離的にごく接近している。」また、出願人は、商標を商品自体に付することは事実上できないし、この表示は公衆の人目を引く位置にあると主張する。出願人は以下のように補足する。

「店舗にウィンドーはない。潜在的購買者はカウンターに歩み寄る。店頭の表示物は、屋台の正面の商品を提供する場において購買者に面した壁に掲示されている。写真で示されるように、使用見本は商品購買者から約2フィート(約60cm)の距離にあり、商品購買者の目の高さにある。商品購買者はこの店頭の表示物と表示物に描写された商品を見て、表示物に描写された商品である、コーンに入ったフローズンカスタードを注文する。商品購買者は商品の代金を支払う。店頭の表示物に示された商品が店員により購買者に渡される。商品は表示物に描かれているように食べられるコーンに入ったフローズンカスタードである。」

使用見本が「商品に関連する表示物」であるかどうかは事実問題である。Land’s End Inc., 24 USPQ2d at 1316, In re Hydron Techs. Inc., 51 USPQ2d 1531, 1533 (TTAB 1999) 「使用見本が商品に関連して使用される表示物として認められるかどうかを分析する際の要因は、顧客が容易にその商標を商品に関連付けることができるように表示されているかどうかである。」In re Osterberg, 83 USPQ2d 1220, 1223 (TTAB 2007) 「これら(旗、棚上の表示、ウィンドーディスプレイ、メニュー等)は、購入を誘発する ものとして商品購買者の注意を引くように意図されたものでなければならない。更に、その表示物は問題の商標を目立つように表示し、かつその商標を商品と関連付けるものでなければならない。」TMEP 904.03(g)

出願人は、その使用見本が商品に関連する表示物としての資格があるという主張のために二つの根拠を述べている。先ず、使用見本が商品の図を含んでいると主張する。第二に、商品が使用見本にごく接近していると主張する。

最初の論点については、商品に関連付けられた表示物は商標を示していなければならないが、必ずしも商品の写真や、本件のようにスケッチされた図を含んでいる必要はない。In re Sones, 590 F.3d 1282, 93 USPQ2d 1118, 1122 (Fed. Cir. 2009) 参照。(表示物としての使用見本が商品の写真を含んでいるか否かは表示物が十分に商品に関連付けられているか否かを決定する手掛かりではない、と判示。)従って、この問題は出願人が商標自体に商品の視覚的態様を含ませたということだけで決定されるものではない。

通常、商標及び商品の写真や絵を含んでいるという理由で十分に商品に関連付けられた表示物であると主張される使用見本は、ウェブページやカタログに関わるケースで見られ、商品注文のための十分な情報を伴ったときに使用見本としての役割を果たす。Land’s End, Inc., 24 UDPQ2d at 1316、In re Valenite Inc., 84 USPQ2d 1346, 1349 (TTAB 2007) 参照。本件出願人の使用見本はこの種のものではなく、商品、一人前の分量、味わい、価格その他について何ら情報を含んでいない。

更に、このフローズンカスタードコーンの図面はニューヨーク市ブルックリン地区のConey Island 遊園地を想起させるものであり、表示中の語句と使用見本の右側に描かれている観覧車との相互関係を強化しようと意図していることが分かる。従って、この特定の使用見本におけるコーンの図は、出願人の商品の特性を紛れもなく表示しているというよりも文字と図形の結合商標の一部だと理解される可能性が高い。

出願人の第二の論点、すなわち販売される実際の商品は使用見本に示された商標のごく近くの距離にあるという点について言えば、この主張を裏付けるものが写真には何もない。商標の表示物は商品の購入地点で使われているかもしれないが、使用見本の商標は顧客が購入地点で容易かつ直接的に商品と関連付けられるようには表示されていない。すなわち、距離的に接近していると主張されているが上記のことは示されていない。In re Universal Oil Prods. Co., 476 F.2d 653, 177 USPQ 456, 457 (CCPA 1973) 参照。(商標は出願の指定サービスと「直接的な関連性」がなければならない。)In re Safariland Hunting Corp.  24 USPQ2d 1380, 1381 (TTAB 1992) も参照。(使用見本は商品との「直接的な関連性」を示していなければならない。)

加えて、本件の表示はかなり小さく、封筒のサイズ程しかない。サイズが小さいため必ずしも顧客の目に留まるともいえない。更に、この表示は営業免許とデラウェア州公衆衛生部の証明書の隣に掲示されており、商人が「購入を誘発 するものとして商品購買者の注意を引くように意図された」ものを置くような場所ではほとんどない。TMEP 904.03(g) いずれにせよ、顧客は自分に面した壁に貼られたメニューを見るかもしれないが、公衆衛生部及び規制機関の証明書と一緒に掲示された表示を商品のための商標だと考えないであろう。(ちなみに、本件の表示は、普通はメニューに記載されるような食品リストやそれらの価格等の情報はなく、一食品<カスタード>だけを示し味わいや価格には触れていない。)従って、本件の表示は商品に関連する表示物とみなすことはできない。

出願人が主張するように、たとえ本件の商標をその商品に付することができないとしても、本件使用見本の商標は、顧客が商標を商品に関連付けることによって使用見本が商品の購入を誘発 する機能を果たすようには表示されていない。この点を考慮すると、本件の使用見本は商品に容易かつ直接的に関連づけられる表示ではなく、本件商標の使用を示す裏付けとして役立たない。

3)結 論
出願人の商標の登録拒絶を支持する。

<参 考>
同じ出願人が同時に同一商標について「Retail stores featuring frozen desserts and beverages」(第35類)を指定サービスとする出願を行ったが、本件と同一の使用見本を提出することによって登録を付与されている(登録第4939484号)。サービスを指定する商標出願については広告物が使用見本として認められることに基因するものと思われる。

(以上)

執筆者

商標・意匠部アソシエイト 弁理士

黒田 亮 くろだ まこと

[業務分野]

意匠 商標

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