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インターネットを通じて利用者にTV番組を視聴させるサービス について著作権侵害を肯定した米国連邦最高裁判決の紹介 (Aereo事件)

企業法務ニュース第60号 2014年10月20日

弁護士 磯田 直也

1 事案の概要(注1)

注1 AMERICAN BROADCASTING COS., INC., ET AL. v. AEREO, INC., FKA BAMBOOM LABS, INC., 573 U. S. ____ (2014), (U.S. June 25, 2014)

 原告(上告人)であるABC等の放送事業者、TV事業者らTV番組の著作権者が、被告(被上告人)であるAereoの提供する月額料金制のインターネットを通じて利用者がTV番組を視聴できるサービスにつき、著作権(公の実演権(注2))を直接侵害すると主張してpreliminary injunctionを求めて提訴した。

注2 ”the exclusive rights to do and to authorize any of the following:

(4) in the case of literary, musical, dramatic, and choreographic works, pantomimes, and motion pictures and other audiovisual works, to perform the copyrighted work publicly.” 17 USC § 106(4). 侵害というためには、被告の行為が著作物の「公の実演」、すなわち、「publicly perform」である必要がある。

 Aereoシステムは、同社の中央倉庫に設置されたサーバ、トランスコーダ、多数のアンテナから構成されており、Aereoシステムの動作は以下のとおりである。

① 利用者が現在放送されているあるTV番組を視聴したいと思ったとき、利用者はAereoウェブサイトにアクセスし、リストアップされたTV番組から希望の番組を選択する。

② サーバがアンテナを選択する。当該アンテナは選択された番組の視聴中は、当該利用者のみに割り当てられる。アンテナが放送を受信し、トランスコーダが受信した放送の信号を電子データに変換する。

③ サーバは、番組の電子データをハードディスク内の当該利用者に割り当てられた専用フォルダに保存する。

④ 番組の数秒分が保存されると、サーバがストリーミングにより保存された番組データをインターネットを通じて利用者に送信する。利用者はその端端末等で番組を視聴する。番組データの保存、ストリーミング送信は番組視聴が終わるまで継続される。利用者の視聴は、実際の放送より数秒遅れる。

Aereoシステムの特徴は、個々の利用者ごとに割り当てられたアンテナによって受信された放送番組データにつき当該利用者用のコピーデータが作成され、当該利用者にストリーミング送信されるものであり、当該データを他の利用者への送信に使用することはない点にある。つまり、受信・作成された番組データと利用者の関係が1対1である。

2 争点

① Aereoは著作権法にいう「perform」の主体といえるか(侵害主体性)。

② Aereoのperformは「publicly」に行われたか。

3 判旨(法廷意見)

以下、判旨の概要を紹介する。

(1)争点 ①
  • Aereoは、利用者自らがAereoシステムを使用してTV番組を視聴しているのであって、利用者こそが送信主体であり、アンテナとDVR(digital video recorder)に相当する装置を提供しているに過ぎないAereoは送信主体ではないと主張している。
  • しかし、現行著作権法(1976年改正著作権法)の立法者意思に鑑みると、Aereoは送信主体というべきである。
  • 1976年改正の際の議会の主要な目的は、それ以前の2つの連邦最高裁判決で、CATV によるテレビ番組の再送信が旧法上の実演にあたらないと判断されていたところ、かかる判例法を覆し、CATVの行為 を著作権法の規律対象とする点にあった。
  • 1976年改正著作権法によって規律対象となったCATV 業者の行為もAereoの行為も、そのほとんどが著作物であるTV 番組を放送とほぼ同時に利用者に視聴させるサービスを有償で提供しているという点で、実質的に類似している。
  • 確かに、CATV とAereoシステムの間に以下のとおりの相違点がある。CATVでは、CATV業者自身が放送されているTV番組を全ての利用者に対し送信し続けている。これに対して、Aereoシステムでは、個々の利用者が視聴したい番組を選択するまではAereoシステムは何もせず、かつ、利用者の要求に応じて自動的に、アンテナを作動させてTV番組を受信しそれを当該利用者に送信する。しかしながら、本件におけるAereoシステムのCATVシステムの酷似性からすれば、かかる単なる技術的な相違は送信主体性の判断に決定的な違いを与えるものではない。本件とは異なる種類のサービス・技術に関して、送信主体性を判断するにあたって、装置の運用や転送されるコンテンツの選択へのユーザの関与の程度が判断に影響を与えることはあり得るが、CATVと類似するAereoシステムについては当てはまらない。
  • Aereoは著作権法にいう「perform」の主体である。
(2)争点 ②
  • Aereoは、システムによって送信される番組はたった1人の利用者にしか受信可能ではないから、同システムによる送信は「publicly」、公衆へ(「to the public」)の送信ではなく、「privately」であると主張する。
  • しかし、立法目的に鑑みると、AereoサービスがTV番組を利用者のスクリーンに届けるという点でCATVと共通することから、このような技術的事項の差異は問題にならない。議会は、CATV業者と同様にAereoサービスのような許諾されない行為から著作権者を保護する意図である。
  • 同じメッセージを友人達にメールする場合、個別メールによることも、同報メールによることも可能であるのと同様に、同じ著作物の実演を送信する限り、何度かの送信で送信しても、一度に送信しても、法的評価は変わらない。
  • ある主体が同時に受信可能な映像と音声を複数人に伝達している以上、伝達がいくつかに分離されているか、分離された伝達の個数、また、単一のコピーを用いて送信したかどうか、また、Aereoのように個々の利用者ごとに専用のコピーを用いて送信したかに関わりなく、その主体は、当該実演を複数人に対し送信しているといえる。
  • 「公衆」(「the public」)とは家族および社会的知人の通常の範囲を超えた大勢の人々を指す。Aereoの利用者たちはこれに該当する。
  • 実演の受領者が「公衆」(「the public」)に該当するか否かの判断では、実演の元になった著作物と受領者との間の事前の関係が考慮される。例えば、駐車場の係員が駐車車両の運転者らに車を返還する際に、係員が公衆に車を提供しているとは言わない。反対に、カーディーラーにおいて顧客らに車を販売する場合には、その顧客らは当該車との間に何ら事前の関係(「pre-existing relationship」)が存在しないから、ディーラーが公衆に対し車を提供したということができる。同様に、実演の受領者が実演の元になった著作物の所有者または占有者(「owners or possessors of the underlying works」)である場合には、業者が当該実演を受領者に提供したとしても、これは「公衆」への実演とはいえない。しかし、Aereoの利用者は、送信される実演の著作物との間でこのような事前の関係を有しておらず、結局、これら利用者への送信は「公衆」への送信というべきである。
(3)判決の射程について
  • AereoらはAereoサービスを著作権侵害と判断した場合、今後の新規技術に対しても著作権侵害の責任を課すおそれがあると主張する。
  • しかし、本判決は、CATVと類似するAereoサービスについて「公の実演」をしたと結論したものであり、他のサービスについて判断するものではない。
  • 「公衆」該当性についても、前記のとおり、事前の関係がある者は該当しないと判示した。また、当法廷はリモート・ストレージサービスのように、著作物の送信以外の方法を用いる有料サービスについて「公の実演権」に侵害するかどうかは判断していない。
  • 最終的には、フェアユースの適用により、条項の適切な解釈適用を防止することも期待できる。
  • 当法廷は、審理対象ではない他の技術に著作権法が適用されるかどうか答えることはできない。Solicitor Generalは、クラウドコンピューティングやリモートストレージDVR等の他の新規なサービスに関する著作権侵害の疑問については、これらが正面から争われる別の訴訟判断を待つべきであるとの意見を述べているが、当法廷もこれに同意する。また、政府がDMCA法による著作権法512条のようなセーフハーバー規定についてのアクションを議会に求めることも可能である。
(4)結論

著作権侵害を否定していた原判決を破棄し、差し戻す。

4 おわりに

本判決は、著作物の利用に間接的に関与するサービスについての著作権侵害の一般的な判断基準が示しているものでもなく、裁判所自身が判決の中で述べているように、その射程は狭いものである。同種サービスはともかく、リモート・ストレージやクラウド・コンピューティングといった近時に新たに出現したサービスについては、今後の司法判断に委ねられた。日本でも、同様のサービスについて提供業者が著作権(送信可能化権)侵害の主体であることを認めた最高裁判決がある(最判平成23年1月18日「まねきTV事件」)。日米両国とも、下級審において著作権侵害が否定されていたサービスについて、最高裁レベルで逆転判決が出された点で興味深い。

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執筆者

法律部パートナー 弁護士

磯田 直也 いそだ なおや

[業務分野]

企業法務 国際法務 知財一般 特許 意匠 商標

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