商標判例読解28 どくろマーク審決取消訴訟事件判決(訴訟物を異にする後訴を信義則によって排斥した事例)
業務分野:商標
カテゴリー:判例
著者など | 伊達 智子 ユアサハラ法律特許事務所/商標判例研究会 |
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業務分野 | 商標 |
出版日 | 平成27年7月15日 |
掲載誌・出版物 | 特許ニュースNo.14003 |
出版社 | 一般財団法人 経済産業調査会 |
概要
当事務所・商標判例研究会による連載「商標判例読解」の第28回
本件は、前件審決取消訴訟(前訴)と①当事者及び②争点(本件商標と引用商標の類否)を共通にする審決取消訴訟(後訴)の提起について、実質において、本件商標と引用商標との類否判断につき、既に判決確定に至った前件審決取消訴訟を蒸し返すものとして、訴訟上の信義則を理由に、訴えが却下された事例である。
前件審決取消訴訟は、本件と同じく被告の請求に基づき、原告の有する本件商標の指定商品の一部(第25類)に関して商標法4条1項11号(他人の先願登録商標と同一又は類似の商標)に該当するものとしてその登録を無効とした審決の取消訴訟であり、判決確定に至っている。
本件審決取消訴訟は、引用商標の商標権者である被告の請求に基づき、原告の有する本件商標の指定商品の一部(第14類、第18類)に関して商標法4条1項11号に該当するものとしてその登録を無効とした審決の取消訴訟であり、争点は、(1)本件商標が引用商標に類似するか、(2)両商標が非類似とする原告の主張が前件訴訟の蒸し返しであるか否かである。
本判決は、争点②に関して、本件審決取消訴訟と前件審決取消訴訟とは訴訟物が異なるとしつつも、①当事者及び②本件商標と引用商標との類否という争点を共通にし、本件審決取消訴訟における原告の主張は、前件審決取消訴訟における主張を実質的に繰り返すものであるから、実質において、既に判決確定に至った別件審決取消訴訟を蒸し返すものといえ、訴訟上の信義則に反し、許されないと判断した。
本件審決取消訴訟の提起を不適法なものとして却下した本判決の判断は、前訴において主要な争点について攻防が尽くされたことを理由に後訴を遮断する近時の判例の傾向に沿ったものと思われる。しかし、本件における前訴及び後訴は、いずれも引用商標の商標権者である被告の請求に基づき、原告の有する本件商標の指定商品の一部の登録を無効とした審決の取消訴訟であるから、被告の当該請求を直接のきっかけとするものであり、紛争を蒸し返したのは被告ともいえる事案である。したがって、原告による本訴の提起が不適法なものであり却下を免れないとする本判決の判断には違和感がある。
なお、記事の全文は「特許ニュース」No.14003(平成27年7月15日号)をご覧ください。
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