ブラジル:化学分野特許審査ガイドライン第9章改訂版を公表(2026年6月30日施行)
地域:ブラジル
業務分野:特許
カテゴリー:法令、その他
ブラジル産業財産庁(INPI)は、2026年6月30日付の官報(Official Gazette No. 2895)においてNormative Ordinance No. 80/2026を公布し、Resolution No. 208/2017により定められていた化学分野特許審査ガイドライン第9章「既知製品の新規用途(New Uses of Known Products)」の改訂版を公表した。
改訂版第9章は、2026年6月30日から施行されている。
今回の改訂によって基本的な審査原則が大きく変更されたわけではないものの、既知製品の新規用途、特に第二医薬用途発明について、開示の十分性、新規性、進歩性等の判断基準が詳細化・明確化されている。
また、今回の改訂では、その対象が第二医薬用途に限定されるものではなく、既知製品の新規用途一般に及ぶことが明確化された。
したがって、医薬用途に加え、例えば農薬、動物用医薬品、化粧品、工業分野等における既知製品の新規用途についても、本ガイドラインに基づいて審査されることになる。
従来の基本原則が維持された点
・第二医薬用途発明は、スイス型クレーム(Swiss-type claim)*の形式により、引き続き特許保護の対象となり得る。
*スイス型クレームとは、例えば“Use of compound X, characterized in that it is in the manufacture of a medicament for the treatment of disease Y.” のように、 既知化合物の新たな医薬用途を「医薬の製造における使用」として規定する形式のクレームをいう。
・第二医薬用途発明については、治療、予防または診断の対象となる疾患または病態が先行技術に開示されていない場合に、新規性が認められる。
主な変更・明確化された点
【開示の十分性】
1.出願時における技術的裏付けに関する要件の明確化
・明細書には、出願時点で、クレームされた第二医薬用途を裏付ける明確かつ十分な証拠が記載されていなければならず、in vivo試験による裏付けが「望ましい」とされ、in vitro、ex vivo、またはin silicoの試験結果は、クレームされた治療用途をどの程度裏付けるものであるかが個別に判断される。
・出願後に提出された実験データによって、出願時における明細書の開示不足を補うことはできない。一方、出願当初の開示が十分である場合には、当初開示された内容を確認・裏付ける補足情報は提出し得る。
2.マーカッシュ式で定義された化合物に関する開示要件の具体化
マーカッシュ式により包括的に定義された化合物の用途について、十分な開示がなされていると認められるためには、明細書において、異なる置換基に係る各化学クラスにつき、少なくとも1つの代表的化合物について具体的な実験例を記載する必要がある。
【新規性】
3.治療関連の特徴に関する従来の取扱いを維持・明確化
治療レジメン、用量、投与経路、投与間隔、特定の患者群等の治療関連の特徴は、それ自体では、既知の医薬用途に新規性を付与する技術的特徴とは認められないことが明確化された。
したがって、これらの治療関連の特徴のみを相違点とする第二医薬用途発明については、今回改正されたガイドラインの下では新規性が認められない。
実務上の示唆
ブラジルにおける第二医薬用途発明の出願では、出願後のデータ等による補完が厳しいので、出願時点で利用可能な実験データ等を可能な限り盛り込み(特にin vivoデータが利用可能なら含めることが望ましい)、十分な技術的裏付けを備えた明細書を準備することが、これまで以上に重要となる。
また、ブラジルでの審査に適した補正クレームは、審査請求までに提出することが必要である。
審査請求後に新たなカテゴリーのクレームを追加したり、クレームの範囲を拡張または変更したりする補正は、拒絶理由を解消するためであっても、認められない。
執筆者
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