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AI法案と行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案):企業等のAI導入の促進に向けて

1.日本における生成AIの活用推進の動き

まず、AIに関する基本的な法律として、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(AI法案)が衆議院を通過し、参議院での検討となっている。
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(AI法案)
出典:内閣府ホームページ
(URL: https://www.cao.go.jp/houan/pdf/217/217anbun_2.pdf)

AI法案は、第3条2項において、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進は、人工知能関連技術が、その適正かつ効果的な活用によって行政事務及び民間の事業活動の著しい効率化及び高度化並びに新産業の創出をもたらすものとして経済社会の発展の基盤となる技術であるとともに、安全保障の観点からも重要な技術であることに鑑み、我が国において人工知能関連技術の研究開発を行う能力を保持するとともに、人工知能関連技術に関する産業の国際競争力を向上させることを旨として、行うものとする。」としており、人工知能関連技術が、その適正かつ効果的な活用によって行政事務及び民間の事業活動の著しい効率化及び高度化並びに新産業の創出をもたらすことを述べている。

このように、AI法案は、AIの適正かつ効果的な活用を推進している。

また、デジタル庁から本年3月28日に「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」が公表され、意見募集が行なわれた。
出典:デジタル庁ウェッブサイト(URL:https://www.digital.go.jp/news/577ff41c-bb8a-450e-8ead-b59d0189924f)

上記「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」においては、行政庁においても、生成AIの積極的な利活用が検討されている。

また、以前から総務省、経済産業省「AI 事業者ガイドライン(第1.0版)」(令和6年4月19日)が発表されている。
出典:経済産業省ウェブサイト
(URL:https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419004/20240419004.html)

以上のように、生成AIの利活用を推進する方向で検討がなされている。

一方で、生成AIの利用については、上記「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」20頁~22頁において、生成AIによるリスクの例を挙げている。

しかし、上記「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」36~37頁では、生成AIシステム特有のリスクケースへの対応について、リスクをゼロにすることはできないとの前提のもと、リスクを軽減するための対応と並行して、リスクが顕在化した場合等への対応を各府省庁において準備しておくとしている。

このように、生成AIのリスクがあっても、生成AIの利活用を推進する方向で検討がなされている

2.企業等における生成AIの活用

近年AIの性能が上昇しており、社員がAIを活用することにより、生産性の向上が可能となっている。企業等におけるAIの活用は重要となっている。

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(AI法案)の第3条2項も、「人工知能関連技術が、その適正かつ効果的な活用によって行政事務及び民間の事業活動の著しい効率化及び高度化」との文言を用いている。

すなわち、AI法案も、AIの積極的な活用により、民間の事業活動の「著しい効率化と高度化」をもたらすことを述べている。

現在の最新のAIでは、人間よりも頭がよいと思われる回答が出てくることが多い。正確な時期はAI研究者により様々な説があるが、近いうちに人間をはるかに超えるレベルの超知能に達するとされている。筆者も、人間をはるかに超えるレベルの超知能を前提とした法制度等の問題について研究を行っている(超知能の時代の法制度研究ブログ)。

近い将来に、AIの知能が人間をはるかに超えていくにつれて、AIの導入に積極的な企業とそうでない企業には、非常に大きな格差が生じていくことが考えられる。

AI法案は、AI研究者など有識者の検討を前提としている(AI戦略会議・AI制度研究会の中間とりまとめ(案)について)。AI法案の第3条2項も、「人工知能関連技術が、その適正かつ効果的な活用によって行政事務及び民間の事業活動の著しい効率化及び高度化」と述べており、「行政事務及び民間の事業活動の著しい効率化及び高度化」という文言が法律案に使われている。「著しい」という文言に注目が必要と思われる

このような認識が企業内で広く共有されている企業と、そうでない企業とでは、「著しい」格差が生じていくことが考えられる。

企業における生成AIの活用を推進しようとした場合、企業内の各部署において、導入への抵抗や遅延が起こることが予想される。特に、生成AIの活用には様々なリスクが指摘されており、各部署が責任を取るのをおそれて活用が妨げられることが考えられる。

上記のAI法案や行政庁や事業者のガイドラインは、2025年5月9日の段階では、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」(AI法案)は衆議院を通過した法律案の段階、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」は案の段階ではあるが、国会や行政庁において、国を挙げて生成AIの利活用の推進が検討されていることの資料として、企業内での生成AIの導入推進の説明に有用と思われる。

生成AIの性能は、急速に向上しつつあり、企業においても、経営者や社員等が生成AIを活用していくことの重要性が増大している。

上記「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」は、行政に関するものであるが、民間の取り組みにおいても参考になると思われる。

上記「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」20頁~21頁は、生成AIの利用のリスクとして、AI事業者ガイドラインで挙げられているリスクを列挙している。

また、上記「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」36~37頁では、リスクをゼロにすることはできないとの前提のもと、リスクを軽減するための対応と並行して、リスクが顕在化した場合等への対応を準備することを定めている。

企業においても、AI関係の部署を設けて、社員のAI活用を推進するとともに、AIの利用のリスクの減少を検討することが考えられる。上記のガイドラインが、リスクをゼロにすることはできないとの前提のもとでも、AI活用を推進していることが参考となると思われる。

AIのリスクには、著作権、営業秘密、個人情報、プライバシー、肖像権、パブリシティ権、特許権、意匠権、商標権、利用規約違反や差別等による不法行為など、法律的なリスクや知的財産のリスクもある。

リスクの減少の検討の際には、法務部、知財部など、法務関係、知財関係の支援が必要になりうる。また、企業において、AI関係の部署を設けることも必要となりうる。

経営者、社員等の生成AIの活用の際には、AI関係の部署のバックアップが有用となりうる。社内のガイドラインの整備など、経営者、社員等が生成AIのリスクを低減しながら活用できるような社内整備も重要となる。

また、AI関係の部署が、外部の法律事務所、特許事務所等と連携をして、生成AIの利活用のリスクを低減することも重要となると思われる。

執筆者

法律部アソシエイト 弁護士

岡本 義則 おかもと よしのり

[業務分野]

不正競争防止法 著作権法 企業法務 国際法務 知財一般 特許 意匠

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