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欧州共同体商標(CTM=Community Trade Mark)制度改正 - 2016年公布予定

高田 雄一郎弁理士

CTM制度

CTMは1つの商標登録で欧州連合諸国(2015年10月現在28か国)をカバーする独占的な権利を取得できる制度で、その運営管理はOHIM(Office for Harmonization in the Internal Market欧州共同体商標意匠庁)が行っている。

概要

欧州連合理事会、欧州共同体委員会、欧州議会による2年に渡る議論を経て、改正の合意に至ったことが2015年4月のプレスリリースにおいて明らかにされた。その後、2015年6月10日に欧州理事会の常駐代表委員会によって、改正案(以下のウェブサイトに掲載)が承認された。
http://www.inta.org/Advocacy/Documents/2015/Council%20Compromise_REGULATION_%208JUN2015.pdf

改正後の「共同体商標に関する理事会規則 2009年2月26日No.207/2009」及び「商標に関する加盟国の法律を接近させるための2008年10月22日付け欧州議会および欧州理事会の指令2008/95/EC」(商標ハーモ指令)は、2016年の初頭に公布される見込みである。

この改正により、欧州連合諸国をカバーする商標登録制度の利便性を高め、ビジネスにおける有効性を高め、コストを削減し、迅速化し、予測可能性を高め、法的安定性を高めることにつながると期待されている。

主な改正内容

1. 名称

 改正前:CTM(Community Trade Mark)
 改正後:European Union Trade Mark
 関連条文(改正案)
Article 1
(1) In the title, ‘Community trade mark’ is replaced by ‘European Union trade mark’;

 改正前:OHIM(Office for Harmonization in the Internal Market)
 改正後:European Union Intellectual Property Office
 関連条文(改正案)
Article 2
1. A European Union Intellectual Property Office, hereinafter referred to as “the Office”, is hereby established.

2. 出願費用

 改正前:OHIMへの出願費用は、1出願につき3区分まで一律にEUR900、4区分目以降の追加費用は1区分につきEUR150である。
 改正後:European Union Intellectual Property Officeへの出願費用は、1出願1区分EUR850、2区分目の追加費用がEUR50、3区分目以降1区分につきEUR150となる。
1区分ごとに費用が増加するため、出願区分が絞られることで、1出願あたりの区分数が減少することになると予想される。
 関連条文(改正案)
Annex -I
Amount of fees
The fees to be paid to the Office under this Regulation shall be as follows (in EUR):
(省略)
2. Basic fee for the application for an individual European Union mark by electronic means (Article 26(2)):EUR 850
3. Fee for the second class of goods and services for an individual European Union mark (Article 26(2)) : EUR 50
4. Fee for each class of goods and services exceeding two for an individual European Union mark (Article 26(2)) : EUR 150

3. 更新費用

 改正前:OHIMへの更新費用は、1商標登録につき3区分まで一律にEUR1500、4区分目以降の追加費用は1区分につきEUR400である。
 改正後:European Union Intellectual Property Officeへの更新費用は、1商標登録1区分につきEUR850、2区分目の追加費用がEUR50、3区分目以降1区分につきEUR150となる。
1区分ごとに費用が増加するため、更新の際、使用していない区分が放棄されるケースが増加すると予想される。
 関連条文(改正案)
Annex -I
Amount of fees
(省略)
12. Basic fee for the renewal of an individual European Union mark by electronic means (Article 47(3)): EUR 850
13. Fee for the renewal of the second class of goods and services for an individual European Union mark (Article 47(3)): EUR 50
14. Fee for the renewal of each class of goods and services exceeding two for an individual European Union mark (Article 47(3)): EUR 150

4. 指定商品・役務表記(ニース分類の類見出しの記載について)

 改正前:2012年6月19日のIP translator判決で欧州連合司法裁判所(CJEU)は、「ニース分類の類見出しの一般的記載を使用する出願人は、その登録のための出願がアルファベティカルリストに含まれる全商品・役務を対象とすることを意図しているか、一部の商品・役務を対象とすることを意図しているか、明らかにすべき」と判断した。
しかしながら、ニース分類の類見出しを指定商品・役務として記載した場合、文字通りに解釈するのか、ニース分類のアルファベティカルリストに含まれる全商品・役務をカバーするのか、欧州連合各国の庁の解釈は統一されていなかった。
 改正後:出願時にニース分類の類見出しの一般的記載を指定商品・役務として記載した場合、「明確さ、正確さ」(clarity and precision)を基準に商品・役務が明らかな範囲が指定の対象とされる。
改正後は、出願時にニース分類の類見出しの一般的記載を用いる場合、権利化を希望する商品・役務を別途明記することが望ましい。
なお、欧州代理人の情報によると、IP translator 判決以前に類見出しを記載して登録されたケースについては、経過措置として6か月間、商品・役務の補正の機会が与えられる予定とのことである。補正にあたっては商品・役務の記載の「明確さ、正確さ」が求められる。
 関連条文(改正案)
Article 28
Designation and classification of goods and services
(省略)
2. The goods and services for which the protection of the trade mark is sought shall be identified by the applicant with sufficient clarity and precision to enable the competent authorities and economic operators, on that sole basis, to determine the extent of the protection sought.
3. For the purposes of paragraph 2, the general indications included in the class headings of the Nice Classification or other general terms may be used, provided that they comply with the requisite standards of clarity and precision.
4. The Office shall reject the application in respect of indications or terms which are unclear or imprecise, if the applicant does not suggest an acceptable wording within a period set by the Office to that effect.
5. The use of general terms, including the general indications of the class headings of the Nice Classification, shall be interpreted as including all the goods or services clearly covered by the literal meaning of the indication or term. The use of such terms or indications shall not be interpreted as comprising a claim to goods or services which cannot be so understood.
(省略)
8. Proprietors of European Union trade marks applied for before 22 June 2012 which are registered in respect of the entire heading of a Nice class may declare that their intention on the date of filing had been to seek protection in respect of goods or services beyond those covered by the literal meaning of the heading of that class, provided that the goods or services so designated are included in the alphabetical list for that class of the edition of the Nice classification in force at the date of filing.

5. 絶対的拒絶理由

改正により、共同体商標に関する理事会規則No.207/2009 第4条の規定から「視覚的に表示」(represented graphically)の記載が削除される。これにより、「視覚的に表示可能であること」の要件が緩和され、色、音、動き、ホログラム等の商標の登録可能性が高まると考えられる。
 関連条文(改正案)
Article 4
Signs of which a European Union trade mark may consist
A European Union trade mark may consist of any signs, in particular words, including personal names, designs, letters, numerals, colours, the shape of goods or of their packaging, or sounds, provided that such signs are capable of :
(a) distinguishing the goods or services of one undertaking from those of other undertakings; and
(b) being represented on the Register of European Union trade marks, hereinafter ‘the Register’, in a manner which enables the competent authorities and the public to determine the clear and precise subject matter of the protection afforded to its proprietor.’;

6. 商標調査報告書

OHIMは、CTM出願に対する相対的拒絶理由の根拠となり得る先行CTM商標登録を調査し、調査報告書を先行商標権者及び出願人に送付している(欧州理事会規則 No.207/2009 第38条(1))が、改正により廃止されることとなった。
出願人の請求によって欧州連合各国の庁(28か国すべてではない)から入手する調査報告書(欧州理事会規則 No.207/2009第38条(2))は、存続する。
改正後は、第三者の出願に対するウォッチングの重要性が高まることとなる。

7. 識別力獲得の証明

欧州代理人の情報によると、登録商標に識別力がないことを理由とする無効宣言を求める請求において、商標権者には使用により識別力を獲得していた旨の反論の機会が与えられる。改正までは、識別力の有無の判断時期は出願日であるが、改正後は、登録日となる。
商標権者にとって、識別力を獲得していた旨の立証負担がより軽減する。

8. 税関での差し押さえ

改正までは、欧州連合の域内に流通させる目的で輸送された模倣品でなければ税関において差し押さえることができない。欧州代理人の情報によると、改正後は、域外に流通させる目的で単に「通過」(transit)するにすぎない模倣品であっても税関において差し押さえが可能となる。

以上

執筆者

商標・意匠部アソシエイト 弁理士

高田 雄一郎 たかた ゆういちろう

[業務分野]

意匠 商標

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