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日本: 小売等役務商標制度

青木 博通弁理士

①制度の概要
小売等役務商標制度が 2007年 4月 1日によりスタートする。

小売業者や卸売業者の提供する役務に係る商標をサービスマークとして、国際分類 35類に登録できるようにする(2条 2項)。

改正商標法 2条 2項に「前項第 2号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。」と規定した。

工業所有権ニュース第70号 P8

具体的な小売等役務の表示方法は、省令に定めがあり、デパートのような総合小売としては、「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務においておこなわれる顧客に対する便益の提供」(類似群コード:35K01)の表示を使用することになる。「衣料品、飲食料品、生活用品」のいずれも少なくとも 10%以上扱っていないと総合小売としての登録はできない。この要件により、コンビニエンスストアは、総合小売としては扱わない予定である。

総合小売と商品との類似関係は審査されない。よって、商品に同じ商標が登録になっていても、総合小売については併存登録が可能である。

特定小売については、類似群コード 35K02から35K21までに分類されており、「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(35K02)、「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(35K04)などが指定可能である。特定小売については、商品との類似関係が審査される。例えば、「履物」についてすでに商標「A」が登録されている場合、商標「A」「履物の小売」について、を登録することはできない。

総合小売から特定小売へ、また、特定小売から総合小売への補正は認められない。

②経過措置
(改正法施行前の商標登録出願)
・改正法 2条 2項の規定は、施行後にする商標登録出願について適用し、その法律の施行前にした商標登録出願には適用しない(附則 5条 1項)。

(博覧会出展、優先権主張)
・出願時の特例(9条)については、小売等役務の商標については、この法律の施行の日を出展の日とみなす(附則 5条3項)。

・優先権主張出願の第 1国出願日が改正法施行前であるときは、この法律施行の日を出願日とみなす(附則 5条 4項)

・附則 5条 1項・4項は、防護標章登録に基づく権利にも適用される(附則 5条 5項)

(継続的使用権・先使用権)
・改正法施行前から不正競争の目的なく小売等役務について登録商標またはこれに類似する商標を使用していたものは、継続してその役務についての商標を使用する場合は、その役務に係る業務を行っている範囲内において、その役務についてその商標の使用をする権利を有する(継続的使用権)。業務の承継人も同様(附則 6条 1項)。

・継続的使用権者に対して、商標権者等は、混同防止請求権を有する(附則 6条 2項)。

・継続的使用権を有する商標が、改正法施行の際に需要者の間に広く認識されているときは、その役務について商標の使用をする権利を有する(先使用権)。「業務の範囲」の限定はない。業務の承継人も同様(附則 6条 3項)。混同防止請求権(附則 6条 4項)。

・附則 6条 1項,2項、3項は、防護標章登録に基づく権利にも準用される(附則 6条 5項)。

(特例小売商標登録出願.施行日から 3ヶ月以内に出願したもの)
・施行日から 3ヶ月を経過するまでに出願した小売等役務に使用する商標に係るもの(特例小売商標登録出願)については、商標法 4条 1項 11号(小売等役務との関係のみ)を適用しない(附則7条 1項)。←この期間の出願については、小売等役務との類似関係をみない。しかしながら、商品との類似関係はみるので、できれば、今の段階で、小売等役務と類似関係を判断される可能性のある商品について、商標出願することが望ましい。

・特例小売商標登録出願については、商標法 4条 1項13号(小売等役務との関係のみ)を適用しない(附則 7条 1項)。

・特例小売商標登録出願については、商標法 8条 1項(小売等役務との関係のみ)を適用しない(附則
7条 3項)。←この期間の出願については、小売等役務との類似関係をみない。しかしながら、商品との類似関係はみるので、できれば、今の段階で、小売等役務と類似関係を判断される可能性のある商品について、商標出願することが望ましい。

・特例小売商標登録出願については、商標法 8条 2項の規定については、同日にしたものとみなす(附則 7条 4項)。協議またはくじにより、いずれか一方が登録される。

(使用特例商標登録出願)
・特例小売商標登録出願が 2以上ある場合において、改正法施行前から小売役務等について日本国内において不正競争の目的なく使用している商標について、登録を受ける場合には、使用に基づく特例の適用を主張できる(8条 1項)。

・使用に基づく特例の適用の主張をしようとする者は、商標法 8条 4項の指定期間内(特許庁長官が命じた協議の期間)にその旨を記載した書面及び特定事実(①施行前から、小売等役務について日本国内で使用していること、②願書に記載の役務が①の役務であること)を証明するために必要な書類を特許庁長官に提出する必要がある(附則 8条 2項)。

・使用特例商標登録出願については、商標法 4条 1項10号(小売等役務との関係のみ)を適用しない(附則 8条 3項)。←この期間の出願については、小売等役務に係わる周知商標との類似関係をみない。しかしながら、商品に係る周知商標との類似関係はみるので、できれば、今の段階で、小売等役務と類似関係を判断される可能性のある商品について、商標出願することが望ましい。ただし、すでに、抵触する商品に係る周知商標がある場合には、この手段は効果的ではない。

・使用特例商標登録出願が 2以上ある場合には、くじではなく、使用特例商標登録出願の商標登録出願人が登録することができる(附則 8条 4項)。すなわち、特例小売商標登録出願と使用特例商標登録出願が競合した場合には、使用特例商標登録出願が優先される。使用特例商標登録出願同士が競合した場合には、双方登録。更新時に絞り込むことはしない(17回審議会議事録 27頁)。

・混同防止請求権(商標法 24条の4、52条の2)の規定は、附則 8条 4項の重複登録の場合に準用する(附則 8条 5項)。
工業所有権ニュース第70号 P9

執筆者

商標・意匠部パートナー 弁理士

青木 博通 あおき ひろみち

[業務分野]

意匠 商標

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