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日本: 小売等役務商標出願 17,000件

青木 博通弁理士

「高島屋」、「セブンイレブン」、「ヤナセ」といった小売業者の使用する商標を保護することを目的とした「小売等役務商標」の出願受付が 2007年 4月 1日から開始され、7月 2日までに(特例期間)、約 17,000件の出願がなされた。

本稿では、小売等役務商標制度の概要、そして、求められる企業の対応策について解説する。また、本制度については、特に、商品の販売行為、商品商標との関係をどう考えるかについて、解釈上難しい問題が残されているが、この点を理解するには、本制度導入までの経緯を理解することが重要であるため、その点についても言及する。

本稿は、NBL858号(2007年 6月 1日)に掲載された青木博通「小売等役務商標制度の守備範囲」を一部修正したものである。

1.小売等役務商標制度導入までの経緯
(1) サービスマーク制度の導入(1992年)
日本では、1992年 4月 1日から、広告会社、銀行、不動産会社、運送会社、教育、通信会社、飲食店等の提供する無形の役務について、商標(役務商標 /サービスマーク)の登録を認めるようになった。

それまでは、商品について使用する商標(商品商標)のみに登録を認めていた。

どのような役務が商標法上保護されるかについては争いがあり、小売や卸売は、独立して市場において取引の対象となるものでなく、対価性もないので、商標法上保護される役務とは認められず、小売・卸売業者の商標は、それらの業者が扱う商品について商品商標を取得すれば足りるとの解釈が、1992年当時世界的主流を占めていた。小売・卸売業者の商標を役務商標として保護していたのは、米国のみであった。

そこで、日本も、小売業者等の商標は、商品商標として保護することとした。そのため、デパートやコンビニエンスストア等は、取り扱う商品すべてについて、商品商標の登録をとる必要があった。

しかしながら、これは、コストがかさむと同時に、商品商標の登録だけで、はたして、小売業者等の使用する商標が完全に保護されるかという点において疑問があった。たとえば、デパートの店員の制服、カート、店舗の看板に使用されている商標は、商品との関係では使用されていないので、商品商標にかかる商標権の効力が及ばない可能性がある。

(2)ESPRIT事件(2001年)
米国では、小売業者等の使用する商標は役務商標として保護されていたので、米国企業で、被服等のファッション関連商品の製造者であるとともに自社のブティックも持つ小売業者でもある ESPRIT社は、小売等役務商標としての登録を日本で試みた。

すなわち、商標「ESPRIT」について 35類「化粧品・香水.履物・おもちゃに関連する小売り」を指定して出願をした。

しかしながら、裁判所は、小売は商品の販売促進のための手段であり、独立して市場において取引の対象となるものではなく、直接の対価性もないとして、登録を認めなかった(東京高判平成 13・1・31判時 1744 号 120 頁)。

ESPRIT事件の前には、カタログ販売で有名なシャディも、商標「シャディ」について 42類「多数の商品を掲載したカタログを不特定多数人に頒布し、家庭にいながら商品選択の機会を与えるサービス」を指定して出願したが、ESPRIT事件と同様の理由により登録が認められていない(東京高判平成12・8・29判時 1737 号 124 頁)。

(3)法改正による小売等役務商標制度の導入
ESPRIT事件以降も35類の小売を指定した出願が続いた。これは、1992年に役務商標制度を導入した以上、小売を役務として認めるか否かは、取引者・需要者の認識に基づく、法律解釈の問題と理解されていたためである。

また、1992年当時、小売を役務として認めていなかった欧州が2000年頃から独立した役務として解釈・運用により登録を認めるようになった。

さらに、2007年 1月 1日から施行が予定されていたニース協定国際分類第9版の注釈が小売等役務を積極的に認めるものに変更された。

このような状況を踏まえ、小売等役務商標制度の導入について、産業構造審議会知的財産政策部会商標小委員会(委員長:土肥一史一橋大学大学教授)や(財)知的財産研究所で検討された。

その際に、欧州、米国では、「役務」は他人のためになされなければならず、「販売」は他人のためというよりも、販売者のためになされる行為であるから、「役務」に含まれないとの解釈が定着されていることが参酌された(『平成 16年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 小売業商標のサービスマークとしての登録及びコンセント制度導入に対応する審査の在り方に関する調査研究報告書』(知的財産研究所、2005年)80頁)。

欧州のように、解釈・運用で小売等役務商標制度を導入するのが自然であると思われるが、日本では、法律改正で導入した。平成 12年、平成 13年に東京高裁が小売の役務該当性を否定し、特許庁も裁判でそのように主張していたのを、数年で解釈・運用で変更するのはあまりにも法的安定性を欠くと判断されていたためである。

商標法 2条 2項に「前項第 2号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。」と規定することにより、小売等役務商標制度が導入された。商標の定義規定である商標法 2条 1項 2号は、「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」と規定している。

本 2号により、小売等役務が商標上保護される役務であることが法律により確認され、特許庁、裁判所も拘束することになった。「含まれる」とせずに、「含まれるものとする。」としたのは、本来含まれないものを創設的に含ませるようにしたとの誤解を避けるためと解される。

ただし、附則 5条 1項により本 2号は、2007年 4月1日以後の商標登録出願についてのみ適用される。

2.小売等役務商標制度の概要
(1) 小売等役務商標の意義
小売等役務商標として直接保護されるのは、「小売及び卸売の業務において行われる便益の提供」である。したがって、これ以外の小売業者の行為は、小売等役務商標に係る商標権の専用権の範囲(積極的に使用できる範囲)から外れることになる。

たとえば、小売業者の「販売行為」は、小売等役務商標の直接の保護範囲から外れる。これは、「販売行為」他人のために行う行為ではないから、役務性が認められないとの欧米の解釈をとったものである。「販売」は、商標法 2条 1項 1号の「商品の譲渡」に含まれ、販売の出所を表示する態様で商標を使用する場合には、商品商標(販売標)として保護されることになる。

小売等役務の定義は、商標法には規定していないが、「改正商標審査基準(平成 19年 4月 1日適用)」(特許庁ホームページ)の商標法 6条の説明には、小売等役務について、「小売等役務(小売又は卸売の業務において行われている顧客に対する便益の提供)については、次のとおり解するものとする。/(1)小売等役務とは、小売又は卸売の業務において行われる総合的なサービス活動(商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった最終的に商品の販売により収益をあげるもの)をいうものとする。/(2)小売等役務には、小売業の消費者に対する
商品の販売行為、卸売業の小売商人に対する商品の販売行為は含まれないものとする。」と定義している。

(2) 製 造 小 売
菓子屋、パン屋などに多く見られる製造小売は、自己の製造した商品を取り揃え、顧客にその購入の便宜を図る業態であり、小売に含まれる。

(3) 小売等役務の種類と商品商標とのクロスサーチ
出願する際の小売等役務の表示方法は、商標法施行規則の一部を改正する省令により例示されている。

また、小売等役務同士の類似範囲、小売等役務と商品との類似関係については、法的拘束力がないが、「類似商品・役務審査基準(国際分類第 9版対応)」として、特許庁ホームページに公表された。

これによると、類似群コード「35K01」が総合小売であり、特定小売については、類似群コード「35K02」~「35K21」が付されている。類似群コードの範囲は、通常、同一店舗で取り扱われる商品の範囲が基準となっている。この類似群コードに含まれない小売等役務の登録も認められるが、その場合には、いったん、「35K99」の仮の類似群が付されることになる。

この基準によると、日本のデパートが提供する、いわゆる総合小売「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務においておこなわれる顧客に対する便益の提供」については、商品商標とのクロスサーチ(抵触審査)を特許庁は行わないことになっている。よって、総合小売について小売等役務商標を出願した場合には、商品商標との抵触を気にすることなく登録することができる。

総合小売に該当するか否かの基準(10%ルール)が特許庁の審査基準に定めてあり、衣料品、飲食料品及び生活用品の各範疇のいずれもが総売上高の10%~70%程度の範囲内にないと総合小売としての登録が認められないことになっている。これは、経済産業省の商業統計調査おける業態分類の百貨店、総合スーパーの定義を参考にしたものである。欧米のデパートは、飲食料品を扱わない場合が多いの場で、総合小売について登録することができない可能性が高い。

これに対して、いわゆる特定小売、たとえば「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」については、商品「履物」についての商品商標とのクロスサーチを特許庁は行うことになっている。商品商標と特定小売についての小売等役務商標については、取り扱う商品が一致し、出所の混同の可能性がきわめて高いからである。注目されていたコンビニエンスストアの提供する役務は、総合小売ではなく、特定小売として、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる便益の提供」の表示により登録することとなった。よって、飲食料品をカバーする商品商標とのクロスサーチが
行われることになる。

商品「履物」について商品商標を所有していれば、他社に「履物の小売」について、小売等役務商標を取得される可能性はない。

しかしながら、「履物の小売」と「かばんの小売」は、同一店舗で取り扱われる場合が多いので、同じ類似群コード「35K02」が付され、審査基準上類似関係にある。

この場合、「履物」に商品商標を取得していても、他社が「かばんの小売」について小売等役務商標を取得した場合には、「履物の小売」について小売等役務商標を取得できなくなる。「履物の小売」を行うのであれば、たとえ「履物」について商品商標を取得していても、小売等役務商標を特例期間内に出願する必要がある。

(4) 補  正
総合小売から特定小売への補正、特定小売から総合小売への補正は認められない。自社の行っている小売が総合小売か特定小売か判断に迷う場合には、双方の役務を指定して出願することが望ましい。

なお、特定小売の表示を狭める補正は、要旨変更にならないので認められる。たとえば、「飲食料品の小売~」を「菓子及びパンの小売~」とする補正は認められる。

 (5)商品または商品の包装への使用
小売業者(例:高島屋)が自己の役務(小売等役務)の出所を表示するために、商品(チョコレート)または商品の包装(商品商標として別の商標(例:MEIJI)が付されている)に商標「高島屋」を付す場合には、商標法 2条 3項 3号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ)に標章を付する行為」に該当することになり、小売等役務商標の登録により保護される。

これに対して、プライベートブランドとして、高島屋がチョコレートを製造または販売する場合には、商品商標の登録が別途必要となる。
小売等役務商標と商品商標との違いについては、表-1を参照。

工業71号・日本:小売等・青木先生・表1

3. 企業の対応策
(1) 特例期間内の出願
2007年 4月 1日から 7月 2日までの特例期間内に出願した小売等役務商標同士は、同日に出願した取り扱いになるので(附則 7条 1項)、他者に先に登録されないよう、この期間内に小売等役務商標を出願する必要がある。出願が競合した場合には、協議またはくじにより、いずれか一方が登録されることになる。ただし、一方が周知または著名な場合には、そちらが優先される。

商品商標と小売等役務商標との間には、特例措置がなく、先願主義が適用されるので、商品商標を所有していない場合には、早急に出願する必要がある。

(2) 継続的使用権
2007年 3月 31日以前より小売等役務商標を使用している場合には、商標登録を行わなくとも、その地域において、継続して小売等役務商標を使用することができる(附則 6条 1項)。しかしながら、この継続的使用権は、使用できる地域が、現在の使用地域に限定されているので、将来業務範囲を拡大する予定がある場合には、小売等役務商標を登録することが望ましい。

(3) 商品商標の取扱い
小売等役務は、従来は、商品商標として保護することになっていたので、通常、小売等役務商標を出願する企業は、商品商標を所有している。

そこで、小売等役務商標を登録した場合に、すでに登録した商品商標を更新する必要があるか否かが問題となる。更新費用は、印紙代のみで 1件 15万 1000円かかるので、更新不要となれば、大幅なコストダウンになる。

小売業者がプライベートブランド(製造標)として商標を商品に使用する場合、または、他のメーカーとのコラボレーションにより販売標として商標を商品に使用する場合(例:コダック社のフィルムカメラにFamilyMartの商標を販売標として付す場合)には、商品商標を維持する必要がある。

小売の出所を表示するために商品または商品の包装に商標を付す場合には、小売等役務の商標登録で足りるが、その商品が商標を付したまま他社へ販売される場合には、販売標として機能するので商品商標を維持する必要がある。デパートで全国の銘菓が販売されるような場合である。

上記に該当しないような場合、たとえば、商品または商品の包装には一切小売等役務商標が使用されない場合(例:看板にのみ使用される場合)、商品または商品の包装に小売等役務が使用されるが最終消費者への販売時にのみ小売等役務の出所表示として使用される場合には、商品商標を維持する必要はないと解する。

もっとも、製造小売の場合には上記の区分けが明確にはなされないので、商品商標と小売等役務商標双方を維持した方が無難である。

(4) 親会社および子会社の留意点
親会社のハウスマークを子会社が小売等役務商標として使用する場合には、親会社の名義で小売等役務商標を取得する必要がある。

メーカーの場合、通常販売会社は別法人になっていることが多く、このような場合には、親会社の名義で出願する必要がある。

子会社独自の小売等役務商標であっても、その中に親会社のハウスマークが含まれている場合には、親会社の商品商標の登録と抵触することになるので、やはり、親会社の名義で登録をとる必要がある。

(5) 商標権侵害への対応
小売等役務商標を登録した後、権原のない第三者が、当該商標と同一または類似する商標を同一または類似する役務または商品に使用する場合には、商標権侵害を構成し(商標法 25条、37条)、民事的救済(差止請求、損害賠償請求、信用回復措置)および刑事的救済の対象となる(商標法 36条、38条、78条、民法 709条)。

具体的な侵害の態様としては、権原のない第三者が、①ショッピングカート・買い物かご、陳列棚、ショーケース、試着室、店舗の案内版、接客する店員の制服、商品、商品の包装、買い物袋に、小売等役務の出所を表示する態様で登録商標を付す行為(商標法 2条 3項 3号の使用に該当)、②小売等役務の出所を表示する態様で、商品の会計用レジスターに登録商標を付して会計用カウンターに設置する行為、または、登録商標を付した商品見本を展示して、使用する行為(商標法 2条 3項 5号の使用に該当)、③商品の品揃え、商品の説明を行うウェブサイトに登録商標を付す行為(商標法 2条 3項 7号の使用に該当)、④小売店の店舗の屋上の広告、電車内の吊り広告、新聞広告、新聞の折込広告、店舗内での商品カタログ・価格表、ウェブ広告に小売等役務の出所を表示する態様で登録商標を付して展示し、頒布する行為(商標法 2条 3項 8号の使用に該当)がある。

このような行為の中には、従来の商品商標の登録では、権利行使が難しかった商標権侵害の態様もある。商品商標と別に小売等役務を登録するメリットといえる。

小売等役務商標制度が導入される前は、小売業者の商標は、商品商標の専用権の範囲である程度保護されていた。例えば、Walkman事件では、靴の小売を営む被告の店舗の看板及び包装用袋に「ウォークマン」を使用する行為は、商品の広告・包装に標章を付したものを引き渡す行為に該当し、原告の登録商標「WALKMAN/ウォークマン」(靴)の商標権を侵害すると判断され(千葉地判平成8・4・17)、また、Elegance事件では、婦人服の小売を営む被告の店舗のショーウインドウに「Elegance 及び図形」を婦人服の見える位置で使用する行為は、商品の広告に該当し、原告の登録商標「Elegance 及び図形」(被服)の商標権侵害を構成すると判断されている(東京高判平成 8/9/12)。

しかしながら、今後は、小売り等役務商標を登録することにより、当該商標権の専用権の範囲(役務同一の範囲)で保護されることになり、商品商標の登録によっては、被告の使用態様により、禁止権の範囲(商品と役務の類似範囲)で保護されることになり、商品商標の登録によっては、被告の使用態様により、禁止権の範囲(商品と役務の類似範囲)で保護されることになろう。

(6)  不使用取消審判対策
小売等役務商標を登録しても、継続して3年間、登録商標を登録の対象となている小売等役務(指定役務)に使用していない場合には、第三者の請求する不使用取消審判(商標法 50条)により、その登録が取り消されることになるので、指定役務に登録商標が使用されているかチェックするとともに、使用証拠(例:チラシ、パンフレット、雑誌広告、写真)を確保しておく必要がある。

出願した当初は、総合小売を行っていたが、途中から飲食料品の取り扱いをやめたような場合には、登録商標が指定役務(総合小売)に使用されていないことになるので、このような場合には、別途、特定小売(例:被服の小売)について新出願をする必要がある。

4.小売等役務商標の出願例の検討
2007年 4月 4日までの出願例をみると(括弧書内は、出願番号であり、特許庁のホームページで詳細を確認できる)、たとえばデパートの大丸は、(1) ハウスマークである「大丸」(2007-29693)、大を○で囲った図形商標(2007-29692)、(2) 食品を扱うフロア.の表示である「ほっぺタウン」(2007-29662)、(3) コーナー表示と思われる「くらしのギャラリー」(2007-29647)、「旬鮮とれたて市場」(2007-29656)、(4) 小僧の形をした立体商標(2007-29696)、(5) キャッチフレーズ「あの店この味」(2007-29659)、「あなたらしいいごごち」(2007-29511)などを出願している。

デパートの三越は、小売等役務商標「三越」を総合小売(2007-29592)と特定小売(2007-29593)の双方に出願している。これは、三越の店舗によっては、特定小売のみを行い、総合小売を行っていない場合があるからである。

ショッピングモールの名称が、小売等役務商標に該当するか否かは、明確になっていない。モールの運営事業体自体は商品の品揃えおよび販売を行わないからである。ショッピングモールには、バーチャル(ネット)とリアル(実際の建物)の2つがあり、前者の場合には、 35類の「商品の販売に関する情報の提供」、「ショッピングモール事業の運営」、後者の場合には、それに 36類の「建物の管理」を追加して保護を図ってきた。ショッピングモールの名称を出店している加盟小売店に使用許諾している場合には、加盟店の使用に基づく小売等役務商標の登録可能性も考えられる。実際に、ショッピングモールの名称「日比谷シャンテ」(2007-30127)を東宝が出願している。

三菱グループと関係のない三菱鉛筆は、「三菱」(2007-30158)、「三菱の図形」(2007-30154)、「MITSUBISHI」(2007-30157)をすでに登録済みの
商品商標と類似関係にある35類「紙類及び文房具の小売又は卸売の業務において行われる便益の提供」について、三菱グループに先に権利を取得されないように、2007年 4月 1日にしっかり出願している。

米国のデパート「bloomingdale’s」(2007-29567)、「macy’s」(2007-29568)は、総合小売のみを指定して出願しているが、飲食料品の取り扱いが10%を満たすか、特許庁により厳格に審査されることになろう。10%ルールを満たさない場合、特定小売への補正はできないので、再出願する必要がある。

商標ブローカーが 35類のすべての小売役務について登録するのを排除するため、2類似群コードをカバーする小売等役務商標出願をした場合には、特許庁は使用意思を確認することになっている。

これを避けるために、大手メーカー数社は(2007-30389~2007-304179)(2007-29276~ 2007-20301)、同じ商標(ハウスマーク)を 1類似群コード毎に別々に多数出願している。子会社へのライセンスの関係で早期に権利取得する必要からと推察される。ある程度予想されていたが、これに追随する企業も今後増えよう。

5.今後の課題
小売等役務商標と商品商標との類似関係は、特定小売については、特許庁は機械的に判断することになっているが、訴訟の際、裁判所がどこまで判断するかは未知数である。特許庁の審査基準は裁判所を拘束するものではないからである。

英国特許庁の審査基準では、商品商標と小売等役務商標が実質的に同一であるなど限定的な場合にのみ類似関係を認定することになっている。

裁判所が、どの程度商標が類似する場合に、商品商標と小売等役務商標の類似関係を認めるか、また、今回、総合小売と認められなかったコンビニエンスストアの小売等役務商標と商品商標との類似関係を商標権侵害事件において、どこまで見るのか、今後注目する必要がある。

執筆者

商標・意匠部パートナー 弁理士

青木 博通 あおき ひろみち

[業務分野]

意匠 商標

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