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「HERMÈS INTERNATIONAL and HERMÈS OF PARIS, INC. v. MASON ROTHSCHILD(ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所, No. 1:22-cv-000384)(「メタバーキン」事件)

著者など 青島 恵美    
業務分野 商標
出版日 2023年11月20日
掲載誌・出版物 日本商標協会レター401号
出版社 日本商標協会

概要

「メタバーキン」事件について、弊所弁理士・青島恵美による要約が下記に掲載されました。

掲載先:日本商標協会レター401号(令和5年11月20日号)
発行元:日本商標協会
リンク先:https://www.jta.tokyo/

(ログインID要)

事件の概要は以下のとおりです。

被告は、エルメス社の高級バッグ「バーキン」(バーキンバッグ)をモチーフとした「MetaBirkins」と呼ばれるデジタル画像コレクションを作成し、「MetaBirkins」の商標の下で当該デジタル画像に関連づけられた非代替性トークン(non-fungible tokens(NFT))(メタバーキンNFT)の販売等の行為を行っていた。図1及び図2は当該画像コレクションの一例である。

【図1】                  【図2】

   

(修正された訴状より引用)          (修正された訴状より引用)

2022年1月14日、これに対し、原告は、①原告が所有する「BIRKIN」商標、バーキンバッグのトレードドレス(下記図3、「BIRKINトレードドレス」)等の商標権侵害(Trademark Infringement)(15 U.S.C.§1114(ランハム法32条)及びニューヨーク州コモンロー)、②商標の希釈化(Federal Trademark Dilution)(15 U.S.C. §1125(c)(ランハム法43条(c)))、③反サイバースクワッティング消費者保護法(Anti-Cybersquatting Consumer Protection Act)違反(15 U.S.C.§1125(d))、④虚偽の原産地表示、虚偽の記述及び希釈の禁止(False Designation of Origin, False Descriptions and Representations)に基づく連邦不正競争(15 U.S.C. §1125(a)(ランハム法43条(a))及びニューヨーク州不正競争法違反、等を根拠としてニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に訴訟を提起した。なお、下記図4は原告が実際に販売してきたバーキンバッグである。

【図3】                  【図4】

              

(USPTOデータベースより引用)       (修正された訴状より引用)

2023年2月2日付け決定(OPINION AND ORDER)において、同裁判所は、消費者の認識を基に、「MetaBirkins」というタイトルは所有権のデジタル記録であるNFTとこれに関連づけられたデジタル画像の双方を指していると判断し、当該デジタル画像が芸術表現の一態様となり得ることから、憲法上の表現の自由の保護を考慮し表現の自由と商標保護の利益衡量を行うRogersテストが適用されると判断した。

Rogersテストの下では、原告が(1)被告の「MetaBirkins」商標の使用が当該デジタル画像と芸術的に関連していないか、(2)被告による「MetaBirkins」商標が商品の出所又は内容に関し公衆に明白な誤解を与える目的のために使用されているかのいずれかのファクターを証明しない限り、被告の行為は憲法修正第1条で保護され、侵害に該当しないということになるところ、当該決定において、同裁判所は、多くのファクターに関し重要な事実問題に関する真正な争点が残されているとして、略式判決(summary judgment)によるべきではなく、陪審による審理(Trial)で判断されるべきであると判断した。

陪審裁判の結果、陪審は、被告が意図的にメタバーキンNFTと関連のウェブサイト「metabirkins.com」が原告の「BIRKIN」商標と提携していると消費者を混同させようとした(すなわち原告は上記(2)を立証した)ことを認め、被告の行為は①「BIRKIN」商標及び「BIRKINトレードドレス」の商標権侵害、②商標の希釈化、③反サイバースクワッティング消費者保護法違反に該当する、憲法修正第1条は被告の責任を免除するものではないとして、商標権侵害行為及び商標の希釈化行為によって被告が得た純利益である110,000ドルとサイバースクワッティングに対する法定損害賠償23,000ドルの合計133,000ドルの損害賠償を被告に命じる旨の2023年2月8日付け評決(Verdict)が出された。

その後の原告からの終局的差止め命令を求める申立て(motion for permanent injunction)等に応じて出された2023年6月23日付け決定(OPINION AND ORDER)において、裁判所は、原告は差止め命令による救済を受けるために満たすべき要件(eBay事件において最高裁判所が示した4要件)を満たしていると判断し、生産、販売、広告等のメタバーキンNFT及びこれに関連する商品の処分を禁止する、「metabirkins.com」を含むBIRKIN商標を含むドメイン名を原告に移転する、メタバーキンNFT又は関連商品が原告及び/又はその「BIRKIN」商標及び/又は「BIRKINトレードドレス」と何らかの形で関連又は関係があると公衆に信じさせるような発言、説明又は行為を行うこと等を被告に命じる終局的命令(permanent injunction order)を出した。但し、裁判所は、表現の自由等に配慮し、BIRKIN商標を使用する関連するソーシャルメディアアカウント及び各NFTに関連するスマートコントラクトを含む被告が所有するメタバーキンNFTを原告に移転することを求める原告の主張は認めなかった。

なお、被告は、当該終局的命令に対し第2巡回区控訴裁判所に控訴しているようである。

詳細については、上記の日本商標協会レターをご覧ください。

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