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欧州連合:組み合わせ医薬のSPCについてのCJEU(Advocate General)の見解発表(2024年6月6日)

外国特許情報委員会

組み合わせ医薬のSPC(補充的保護証明書)に関する2件の裁判がCJEU(欧州司法裁判所)に付託されており、Advocate General(法律顧問)の見解が2024年6月6日に発表された。争点は、有効成分の1つに対してSPCが付与されている場合に、当該有効成分と他の有効成分の組み合わせに対し、2つ目のSPCが認められるか、である。

1.裁判概要

SPCの有効性を争う以下の2件の事件において、共通の点があり、裁判は合併してCJEUに付託された。

<2件の裁判>

(1)C-119/22 – Teva BV、Teva Finland Oy 対 Merk Sharp & Dohme Corp.(フィンランド)
(2)C-149/22 – Merk Sharp & Dohme Corp.対Clonmel healthcare Limited(アイルランド)

<共通点>

(1)Merckは、ある物質群が人体に特定の効果を有することを発見し、1990年代にそれぞれのケースで欧州特許を取得した。それらの特許では、それらの物質を他の物質と組み合わせて使用するという考えにも言及している。
(2)Merckは、当該疾患または健康状態を治療するための最初の医薬品を開発し、1つ目の販売認可(MA)を取得し、SPCを取得した。単独の有効成分Aは 特許取得済みのファミリーに属する。

Aとは、     シタグリプチン(ピラジン、C-119/22)
      エゼチミブ(アゼチジノン、C-149/22)

(3)問題の医薬品は、有効成分Aと他の物質「B」の組み合わせであり、対象となる疾患/症状は「最初の医薬品」と同じである。さらに、「B」は特許の優先日以前にすでに同じ目的で使用されていた。Merckは組み合わせ医薬品で2つ目の販売許可を取得し、さらに1つ目のSPCと同じ特許に対し、2つ目のSPCを申請して許可された。

A + Bとは、シタグリプチン + メトホルミン (C-119/22)
      エゼチミブ + シンバスタチン (C-149/22)

(4)組み合わせ医薬に対し付与された同一特許に対する2つ目のSPCは有効か?

付与されたSPCの有効性は、以下を根拠に争われている。

・規則第469/2009号第3条(a): 基本特許による製品の保護
・規則第469/2009号第3条(c): 当該製品が既に「SPC」の対象となっていないこと

<Advocate Generalの見解>

・本件は、第3条(c)ではなく第3条(a)によって、判断されるべきである。(63節)
・製品が第3条(a)の「基本特許によって保護されている」とみなされるためには、

「製品」が

(i)クレームにおいて明示的に記載されているか、少なくとも「具体的に識別可能(specifically identifiable)」である必要がある、というだけでなく、
(ⅱ)その特許の主題である発明に該当する必要がある、

と解釈される。(117節)

・組み合わせが発明となるのは、この組み合わせが、単なる付加効果を超えた革新的な「相乗効果(synergistic effect)」を発揮する場合であり、通常、このような組み合わせは専用の特許の対象となる。SPC規則は、特許権者に、その発明のあらゆる商業形態(「配合剤(”single-pill” combination)」の形態を含む)による販売の遅延について補償するものではない。(107節)

2.当面の対策

・組み合わせの効果を別個の発明として明細書に記載する。
・組み合わせについては別個の特許出願を検討する。

Advocate Generalの見解全文

(注)本記事については、独のHOFFMANN EITLE事務所から情報提供を受けています。

執筆者

特許部

外国特許情報委員会

[業務分野]

特許

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