インド:対応外国出願の正確なStatus情報提供不履行に対する命令(2024年4月2日)
地域:インド
業務分野:特許
カテゴリー:判例
外国特許情報委員会
事件:Google LLC v. 特許管理官(Controller)
決定:デリー高裁、C.A.(COMM.IPD-PAT) 395/2022(決定日2024年4月2日)
Google社は、出願が特許性なしと判断されただけではなく、対応外国出願の正確なStatusの情報提供を行わなかったことが特許法8条違反と判断され、10万ルピー(20万円弱)の罰金が課せられた。
1.事件概要
2007年にインド国内移行したGoogle社のPCT出願(5429/DELNP/2007)は、2019年11月に新規性・進歩性欠如により拒絶査定された。Google社がこの決定を不服として2020年11月6日に審判請求していた。
審判は(IPABが2021年に廃止されてしまったため)デリー高裁によって行われ、2024年4月2日に決定が下された。
(1)進歩性欠如により、訴えは棄却
(2)対応外国出願の正確なStatus情報提供を行わなかったことに対し、10万ルピーの支払いを命令
2.正確なStatusとは?
Google社は、対応外国出願情報提供のためのForm 3において、対応EP出願2つ(1つは分割出願)が「放棄(abandoned)」状態であると申告した。また裁判においても、同様に主張した。しかし、実際には、対応EP出願の2つとも新規性・進歩性欠如によりEPOにより拒絶査定されていた。「放棄(abandoned)」とは、自発的な「放棄」と受け取られる可能性があるので、本件では、「進歩性欠如により拒絶決定」と申告するべきであった。
EP出願とその分割出願の正確なStatusを開示しなかったことは、第8条に基づく開示要件の明白な違反であり、裁判において問われた際にも、EP出願が拒絶された旨を正しく述べず出願が放棄されたと虚偽の主張をしたことも法律違反とされた。
デリー高裁は、進歩性の欠如を理由に、出願を許可できないと決定していたが、特に第8条に基づく開示要件を遵守しなかった事に対する懲戒警告として罰金を追加した。
3.今後の注意点
Statusには、なるべく詳細な情報を記載すること。 例えば、「オフィスアクションに応答しなかったため、拒絶となった」、「手続き的な問題で拒絶された」、「引例拒絶となり、審判が係属中」など。 2024年3月の規則改正において、Form 3の“Date of Grant”が“Date of Disposal”に変更されている。特許付与日のみならず、拒絶査定日や放棄日も記入すること。
第8条違反は、審査での拒絶のみならず、異議や取り消し訴訟での判断理由となる可能性がある。今回の裁判では、特許出願自体が進歩性欠如であり、第8条違反については罰金が課せられているが、場合によっては、第8条違反が特許権を危険にさらす可能性がある。
2024年3月の規則改正により、対応外国出願情報提供のタイムラインが緩和され負荷が軽減された。しかし、審査官から情報提供を求められた時を含め、Form 3を提出する時には、Statusを含め最新および正確な情報を提供しなければならない。
特許管理官はForm 3の正確性をより詳細に審査しており、公共データベースとの不一致があった場合、修正されたForm 3を嘆願書(Petition)および庁手数料(USD110)とともに提出するよう指示することがある。
上記を鑑み、対応外国出願の詳細かつ最新のStatusを、適切な機会、例えば、
口頭審理(Oral hearing)に出席する際にも、インド特許庁に提供することが望まれる。
執筆者
特許部
外国特許情報委員会
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