| 外国特許情報委員会 事件:Syngenta Ltd. v. 特許管理官(Syngenta事件、2023:DHC:5225)判決:デリー高裁C.A.(COMM.IPD-PAT)471/2022(判決日2023年10月13日)
 仮明細書または完全明細書に複数の発明が開示されていれば、自発的な分割出願提出が認められる。
 分割出願が維持されるために、単一性違反を指摘される必要はなく、また、分割出願のクレームが親出願にクレームアップされている必要も無い。
 1.事件概要このSyngenta事件判決は、Boehringer Ingelheim International GMBH v.特許管理官(Boehringer事件,2022/DHC/002682)の分割出願の維持可能性(maintainability)に関する判決(C.A.(COMM.IPD-PAT)295/2022、判決日2022年7月12日)を覆す内容となった。
 Boehringer事件判決では、特許法第16条に基づいて分割出願の維持可能性を判断する条件として、親出願クレームに「複数の発明」の開示が必要であり、明細書の開示のみに基づいて分割出願を行うことはできないとした。
 Syngenta事件の単一裁判官による裁判(Single Bench)において、裁判官はBoehringer事件判決に異議を唱え、対立解決のために問題を複数裁判官による上級裁判(Division Bench)に付託した。
 Division Benchの結論は以下のとおり。(1)複数の発明が、仮出願(クレームなしでも可)または完全明細書の開示によって裏付けられている場合、特許法16条の観点からみて、分割出願は維持可能である。
 「複数」は、親出願のクレームのみに基づいて判断されるべきではない。
 (2)分割出願として認められるための親出願の複数の発明の存在は、単一性違反指摘に対処するための分割出願であっても、出願人の自発分割出願であっても、同様に扱われるべきである。
 2.今後の見通し2023年8月に公開された特許規則改定案にも、今回のデリー高裁判決と同内容の分割出願の適格性を明確化した条文(規則案Rule 13(2A))がある。今のところ、案が採用されるか否か、また、いつ施行されるかは未定である。
 現在の自発分割出願に対し厳格に課せられている要件が、緩和される方向に進んでいる。
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