中国:専利法改正(2021年6月1日施行)
地域:中国
業務分野:特許
カテゴリー:法令
2020年10月17日に専利法の第四回目の改正案が可決された。
今回の改正では、国内外の企業による中国における専利権の行使を容易かつ効果的にするため、故意侵害に対する懲罰的賠償の導入、法廷賠償金額の引き上げ、および専利侵害行為に対する国家知的財産局の行政処分の権限拡大がなされた。また、特許に関係する改正として、特許期間調整制度と薬品特許の存続期間延長制度が新設され、薬品のパテントリンケージ制度が導入された。
専利法改正の中の特許に関係する重要な改正点を紹介する。
1.特許期間調整制度の新設(第42条第2項(新設))
出願日から4年以上かつ審査請求日から3年以上たって付与された特許に対し、出願人に起因しない不合理な審査の遅延について、特許権者の請求により特許期間の調整をすることができると規定された。
2.薬品特許の存続期間延長制度の新設(第42条第3項(新設))
中国国内での販売認可を得た新薬に関係する特許について、新薬の販売認可までにかかった期間を特許権者の請求に応じて補償し、特許の存続期間を延長することが規定された。ただし、延長期間は最長5年であり、新薬の販売認可後の特許権の有効期間の合計は最長14年である。
3.パテントリンケージ制度の導入(第76条(新設))
薬品の販売認可申請者と関連特許権者または利害関係者との間で、販売認可申請中の薬品に関連する特許権について特許権侵害などの紛争が発生した場合に、早期解決する制度(パテントリンケージ制度)が導入された。
当事者は人民法院に訴訟を起こし、販売認可申請中の薬品が他人の薬品に関する特許権の保護範囲に含まれているか否かについての判決を請求することができる。国務院薬品監督管理部門は規定期間内に判決に基づいて関連薬品の販売認可を一時停止するか否かの決定を下すことができる。
また、当事者は特許権紛争について、国家知的財産局に行政裁決を求めることができる。
4.新規性喪失の例外規定に適用追加(第24条(改正))
新規性喪失の例外規定の適用に「国家が緊急事態又は非常事態に陥り、公共の利益のために公開した場合」が追加された。
グレースピリオドの期間6か月は、改正前と同じである。
5.特許権権利行使の強化
(1)故意侵害に対する懲罰的賠償の導入(第71条第1項(旧65条第1項)改正)
侵害行為に対して懲罰的賠償が導入された。重大な故意侵害行為に対しては、賠償金額が算定額の最大5倍になる。
(2)法廷賠償金額の引き上げ(第71条第2項(旧65条第2項)改正)
侵害行為に対する損害賠償金額が所定の方法で確定できない場合に、裁判所が諸般の事情を考慮して決定する賠償額である法廷賠償金額が「1万元以上100万元以下」から「3万元以上500万元以下」へ引き上げられた。
執筆者
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