シンガポール: 特許法の改正および審査基準の改訂
地域:シンガポール
業務分野:特許
カテゴリー:法令
新規性喪失の例外の適用拡大、補充審査の廃止、審査ルートの変更時期、特許付与後補正の評価等に関して特許法の改正および審査基準の改訂がなされた。 (2017年10月30日施行)
I. 新規性喪失の例外の適用拡大 (審査基準第3章第P節第3.96(4)項(e)、第3.96 (5A)項、および第3.96(5B)項)
A. 以下の場合も開示から12か月以内に出願すれば新規性喪失の例外の適用を受けることができるようになった。
1. 発明者による開示、
2. 発明者から発明の主題を知った者が、発明者の同意を得ずに出願した場合の、当該主題の公報掲載による開示、または
3. 先の出願が公開前に取下げられ、拒絶され、または放棄された結果、公開する必要のない出願が過誤によって公開されたことによる開示。
B. 適用申請の時期(審査基準第3章第P節第3.96(5C)項(a)と(b))
1. サーチ/審査請求時、
2. 審査請求時、
3. 指令に対する応答時、あるいは
4.審査報告またはサーチ/審査報告の再審理(review)請求時。
C. 申請時に必要な書面(審査基準第3章第P節第3.96(5C)項後段)
新施行規則第8条に準拠した宣言書あるいは宣誓供述書形式の書面による証拠で全ての関連書類を含むもの。
II. 補充審査の廃止
対応する外国出願の結果を利用する補充審査は、2020年1月1日以降の出願には適用されない。2020年1月1日以降の出願に対してはシンガポール特許庁(IPOS)による実体審査がなされる(審査基準第9章第A節第9.2項)。
2020年1月1日以降の出願とは、
i 2020年1月1日以降の出願日を有する国内特許出願、
ii 2020年1月1日以降の国際出願日を有する国際特許出願の国内出願、
iii 2020年1月1日以降に現実の出願日を有する特許の分割出願。
III. 審査ルートの変更時期
審査請求後で、最終審査報告の発行前であれば、外国出願の結果を利用する補充審査(外国ルート)を通常のIPOSによる審査(通常ルート)に、またその逆に切換えることができるようになった(法第29条第10項および第11項)。
IV. 審査基準の改訂
A. 補充審査の範囲
補充審査の範囲は、発明の主題に特許性があるかないかを考慮することができるところまで広げられた。
B. 自然から単離されたものの特許性の明確化
自然から単離あるいは純化された物質あるいは微生物は発明とみなされない。一方自然から単離あるいは純化された物質あるいは微生物の新規な利用が発見された場合、その利用はクレームすることができる場合がある(審査基準第8章第A節第8.12項)。
C. 特許付与後補正の評価
特許付与後補正の評価について、控訴裁判所(IP事件における最高位の裁判所)の侵害事件判決(Warner-Lambert Company LLC v Novartis (Singapore) Pte Ltd [2017] SGCA45)等を考慮した改訂がなされた。補正された特許が明らかに無効である(obviously invalid)場合には、無効の可能性がある(potentially invalid)場合とは異なり、新規事項の追加または権利範囲の拡張かどうかを考慮することなく、補正を認めない旨の指針が示された(審査基準第7章第E節第7.33項から同第7.36項まで)。
執筆者
特許部
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