欧州特許: 審判部手続規則 (Rules of Procedure of the Boards of Appeal) の改正(2020年1月1日施行)
地域:EP
業務分野:特許
カテゴリー:法令
審判手続の効率性及び予見性を向上させることを目的とした改正審判部手続規則が2020年1月1日に施行される。最も重要な改正は、第一審(例えば、審査部あるいは異議部)の決定に対する審判ケースにおいて、新たな請求、事実、攻撃側の主張、反論及び証拠の提出が難しくなることである。改正規則は、以下で説明する経過措置の例外を除き、2020年1月1日に係属中及びその後に請求されたすべての審判ケースに適用される。
主要な変更点を以下に掲げる。
1. ケース差し戻し(改正規則第11条)
第一審への差し戻しは特別の場合を除いて行われなくなる。
改正前の規則では、審判部にはケースを第一審へ差し戻す裁量権があり、審判部が結論を出すのに必要な問題全てについて第一審が言及していない場合には、第一審へケースを差し戻していた。規則改正により、審判部と第一審の部署とのピンポンを防止するために、特別な理由がない限り、審判部はケースを差し戻さない。
2. 審判手続の基礎(改正規則第12(4)-(6)条)
経過措置:2020年1月1日前に提出された審判請求理由記載書提出およびそれに対する応答に対しては改正規則第12(4)-(6)条は適用されない。したがって、2019年12月31日までに審判請求理由、補正を提出すべきである。
第一審の決定に対する審判ケースにおいて、新たな請求、事実、攻撃側の主張、反論及び証拠の提出が難しくなる。
改正前の規則では、当時者が審判においてはある程度限られた範囲で新たな請求、事実、攻撃側の主張、反論及び証拠を提出することができた。しかし、改正規則では、第一審の判断のもととなった請求、事実、攻撃側の主張、反論及び証拠に関係のないものを審判に供しないように審判部の権限が広げられた。
改正規則により、当事者たちは、審判での補正箇所を特定し、補正がなされる理由を述べることが求められる。さらに、補正がなされる場合、権利者は出願時の明細書中の補正の根拠を示し、それにより何故問題点が解消されるかを説明しなければならない。
3. 審判請求後の補正(改正規則第13(1)条および第13(2)条)
経過措置:2020年1月1日前に口頭審理の召喚の通知あるいはEPC施行規則第100(2)条に基づく見解書(意見書)提出の通知があった場合は、改正規則第13(2)条は適用されない。
審判請求理由記載書提出後は、審判のこの段階で補正を提出する理由が示されなければならないことが規定された。クレームあるいは明細書の補正が明白に問題を解消するのみならず、新たな問題を生じさせることが無いことを証明する責任は権利者あるいは出願人におかれた。
EPC施行規則第100(2)条に基づく見解書(意見書)提出の通知により指定された期間満了後あるいは口頭審理の召喚の通知後は、補正はより厳格になり、当業者によって承服させる理由で正当化される特別な状況がない限り、補正が考慮されることはない。
4. 口頭審理前の実質的な見解の公表(改正規則第15(1)条)
審判部は、口頭審理の前に、決定を下すのに特に重要と考えられる問題を知らせる通知(communication)を当事者に発行しなければならないことが規定された。従前はこのような通知の義務はなかった。通知(communication)は、口頭審理の少なくとも4か月前に発行することが求められる。
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