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米国: IPR(Inter Partes Review)では、米国特許庁は申し立てられた全てのクレームの特許性を判断しなければならないことを判示した最高裁判決(2018年4月24日SAS Institute社事件)

外国特許情報委員会

従来、IPRの請願があると、審判部は37 CFR 42.108(a)*に則って、申し立てられたクレーム全てではなく特許庁長官が無効の合理的な見込みがあると判断したクレームについてのみ審理を行ってきた。しかし、最高裁は、35 USC 318(a)条**を参照して審判部はIPR請願書で無効を申し立てられた全てのクレームについて特許性を審理しなければならないことを判示した。評決は5対4。

*37 CFR 42.108: Institution of inter partes review.
(a) When instituting inter partes review, the Board may authorize the review to proceed on all or some of the challenged claims and on all or some of the grounds of unpatentability asserted for each claim.

**35 USC 318: Final Written Decision
(a)If an inter partes review is instituted and not dismissed under this chapter, the Patent Trial and Appeal Board SHALL issue a final written decision with respect to the patentability of ANY patent claim challenged by the petitioner and any new claim added under section 316(d).

本件事案の概要は以下の通りである。
特許庁長官はSAS Institute社がIPR請願書で無効を申し立てたクレームのうちの少なくとも1つはSAS Institute社の主張が認められる合理的な見込みがあると判断した。よって審判部は、37 CFR 42.108(a)を引用して、無効を申し立てられたクレーム全てではなく(特許庁長官が見込みありとした)一部のクレームについてのみ審理を行った。これに対して、SAS Institute社はCAFCへ不服を申し立てたが拒絶された。

そこで、SAS Institute社はCAFCの判断を不服として最高裁に訴えて、35 USC 318(a)条は無効を申し立てられた全てのクレームそれぞれについて審判部は特許性を判断しなければならないことを要求しているかどうかの答えを求めた。

最高裁は、(i)”shall”は一般的に非裁量の義務を課す、(ii)”any”は通常群の全ての要素を示す、(iii)特許庁長官が部分的審理でIPRを開始する権力(partial institution power)を示す文言は法令にない、そして(iv)法令の文言および文脈ともにそのような権力があるとする推論を強く否定しているとし、SAS Institute社の訴えを認め、標記の判断を示した。

さらに、最高裁は「IPRにおいて審理すべき範囲を決めるのは長官ではなく請願者であり、特許庁長官は審理を開始するかしないかのいずれかを決めるだけ」であるとした。また最高裁は「最も見込みのあるものに絞って審判部が審理できるようにすることが時間や人的資産の浪費を抑えることができる」とする特許庁長官の反論を排除した。

判決全文

執筆者

特許部

外国特許情報委員会

[業務分野]

特許

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