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ドイツ国外での特許侵害品の販売に対して、侵害品の回収と流通ルートからの完全な除去について判示したドイツ連邦最高裁判所の特許侵害事件判決 (XZR120/15 2017年5月16日)

外国特許情報委員会

連邦最高裁判所(German Federal Court of Justice)は、一定の条件を満たす場合(下記I.2)、ドイツ国外で行われた特許侵害品の販売がドイツの特許権を侵害することを判示した。さらに、ドイツ特許法では特許侵害品の回収(recall)と流通ルートからの完全な除去(definitive removal from the channels of commerce)の双方を、並行して請求することができる旨判示した。

本件において、原告は、特許侵害品の廃棄(destruction)、回収および流通ルートからの完全な除去を請求した。一審(マンハイム地方裁判所)は、原告の訴えを概ね認容したが、特許侵害品の廃棄請求は棄却した。控訴審(カールスルーエ高等裁判所)は、原告被告双方の控訴を棄却したが、ドイツ国外の顧客に対する販売の可否および特許侵害品の回収が認められる範囲(scope of recall claim)という法律上の問題に関する判断を民事事件における最終審である連邦最高裁判所に求めることは認めた。

I. ドイツ国外での販売(sales outside Germany)についての連邦最高裁判所の判断は以下の通り。

1. ドイツ国外に拠点を置く顧客に特許侵害品を譲渡した、ドイツ国外に拠点を置く販売者は、一般には、譲渡した特許侵害品がその後どのように利用されるかをチェックしたり監視したりする義務はない。よって、単にドイツ国外の顧客に特許侵害品を譲渡するだけではドイツ国内での潜在的な特許権侵害の責任を負うことはない。

2. ドイツ国外の顧客が譲渡された(輸入した)侵害品をその後ドイツに譲渡(輸出)するだろうことを具体的に示す事実(concrete indications) を販売者が知り得た場合、販売者の監視義務が生じる。販売者が監視義務を怠って、ドイツ国内への譲渡(輸出)を止めなかった場合、販売者はドイツ国内での特許権侵害の責任を負う。「具体的に示す事実」とは、ドイツ国に輸出(逆輸入)されるという情報を得た場合や、譲渡された商品の数量が当該特許権がない国々のみで販売し終えると考えるのが困難であるほど大量である場合などがある。

3. ドイツ国への逆輸入の可能性を「具体的に示す事実」についての事実認定が不十分として連邦最高裁判所は本件を前審(高等裁判所)に差戻した。

II. 特許侵害品の回収が認められる範囲についての連邦最高裁判所の判断は以下の通り。

1. まず、回収(recall)請求と流通ルートからの完全な除去(definitive removal from the channels of commerce)請求は異なる立法目的を有するが、一部重複し、さらに補完し合うものであり、互いを排除するものではない。

2. 「回収」は顧客に侵害品を戻すことを単に依頼する義務を被告に負わせる。これに対して、「完全な除去」とはドイツ国内の流通ルートにおいて侵害品が流通することがないようにあらゆる法的および非法的処置を講ずる義務を被告に負わせる。

3. さらに、ドイツ特許法では侵害品破棄の義務を負わせることのできないドイツ国外の被告に回収された侵害品が戻されていたとしても、回収請求はできるとした。また、回収請求は侵害品廃棄請求のためにあるのではなく、独立した救済手段であり、両請求を並行して行うことができるとした。

執筆者

特許部

外国特許情報委員会

[業務分野]

特許

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