韓国特許法改正(2017年3月1日施行)
地域:韓国
業務分野:特許
カテゴリー:法令
特許登録取消申請制度、職権再審査制度、さらに特許移転請求制度の導入および審査請求期間の短縮、ならびに外国審査結果の提出命令の導入等を骨子とする特許法の改正。
1. 特許登録取消申請制度の導入(改正特許法132条の2から改正特許法132条の15まで)
1.1 何人も登録から6ヶ月以内に以下の理由により登録特許の取消請求を韓国特許庁(KIPT)にすることができる。
・特許法29条1項、2項(新規性あるいは進歩性)違反
・特許法36条(先願)違反
・特許法29条3項、4項(拡大された先願の地位)違反
1.2 取消理由がある場合、特許権者に書面で通知され、訂正請求あるいは書面による反論の提出の機会が与えられる。
1.3 取消理由がない場合、上記の手続きを行わず、請求棄却の決定をする。
1.4 取消の決定に対しては、特許権者は裁判所に提訴することができる。取消の決定が支持されると、当該特許権は初めからなかったものとみなされる。
1.5 利害関係人であることを要件としない3ヶ月間の無効審判制度は廃止され、その代わりにこの登録取消請求制度が導入された。
1.6 特許登録取消制度は、2017年3月1日またはそれ以降に設定登録される特許に適用される。
2. 職権再審査制度の導入(改正特許法66条の3)
2.1 特許査定後、新規性欠如等の明らかな拒絶理由が見つかった場合は、審査官は職権で特許査定を取消し、職権で再審査することができる。
2.2 職権で再審査するためには、審査官は特許査定を取消すことを出願人に通知しなければならない。
2.3 この制度は、2017年3月1日またはそれ以降に特許査定される出願に適用される。
3. 職権補正範囲の拡大(改正特許法66条の2)
3.1 審査官が特許査定をする際、従前認められていた審査官職権による明らかな誤記の補正に加えて、拒絶理由に相当する事項も明らかに誤っている記載も職権で補正できる。
3.2 審査官の職権補正に出願人が同意しない場合は、特許査定は取り消され、職権補正は最初からなかったものとみなされる。
3.3 この改正は、2017年3月1日またはそれ以降の職権補正から適用される。
4. 実体審査請求期間の短縮(改正特許法59条(2))
4.1 審査請求期間を出願日(国際出願の場合は国際出願日)から5年を3年へ短縮した。
4.2 この改正は、2017年3月1日またはそれ以降の出願に適用される。
5. 正当な権利者の出願可能期間の延長(改正特許法35条)
5.1 無権者の特許を無効とすべき旨の審決が確定した日より30日以内に、正当な権利者が特許出願を行うと、当該特許の出願時に特許出願したとみなされる。
5.2 現行法では、無権者の特許(冒認特許等)を無効とすべき旨の審決が確定した日から30日以内、かつ当該特許の登録公告日から2年以内に、正当な権利者は特許出願をしなければ当該特許の出願時に特許出願したと認められなかった。登録公告日から2年が経過した後に無効審決が確定した場合でも、出願ができるようになる。
5.3 この改正は、2017年3月1日またはそれ以降に設定登録される無権者の特許に適用される。
6. 特許権移転請求制度の導入(改正特許法99条の2)
6.1 上記「5. 正当な権利者の出願可能期間の延長」とは別に、無権者の特許に対して正当な権利者は裁判所に当該特許権の移転を直接請求することができる。
6.2 裁判所の判決を受けて、正当な権利者は特許庁に当該特許権の移転登録を請求することができる。移転登録前に、善意で実施していた者には通常実施権が付与される。
6.3 この制度は、2017年3月1日またはそれ以降に設定登録される無権者の特許に適用される。
7. 外国審査結果の提出命令の導入(改正特許法63条の3)
7.1 最初に出願がなされ、優先権主張の基礎となった第一国の審査で引用された先行技術の提出を審査官は命じることができる。
7.2. この命令は、2017年3月1日以前に優先権主張をした出願にも適用される。
8. 特許無効審判での訂正請求の取り下げ時期の限定(改正特許法133条の2)
8.1 無効審判の日請求人が下訂正請求は、以下の期間に限り取り下げることができる。
・訂正を請求ができる期間と、その期間の満了から1ヶ月以内
・訂正が認められないとして請求人に意見書の提出をもとめる期間
8.2 この改正は、2017年3月1日またはそれ以降に訂正請求をする案件に適用される。
9. 当事者による侵害訴訟手続きの一時中止申立手続きの導入(改正特許法164条)
9.1 裁判所は訴訟手続きにおいて必要な場合、職権であるいは当事者の申立により、無効あるいは登録取消審理の決定がなされるまで、侵害訴訟の手続きを一時中止することができる。
9.2 侵害訴訟の対象と同一の特許権に対する審理が行われる場合、従前の通り裁判所は職権により訴訟手続きを中止できるが、新たに当事者の申請によっても訴訟手続きを中止できるとした。
9.3 この手続きは、2017年3月1日時点で係属している全ての訴訟事件と、2017年3月1日またはそれ以降に提訴される訴訟事件に適用される。
10. 手続の追後補完期間の延長(改正特許法17条)
10.1 拒絶査定に対する審判等の請求期間を出願人の責めに帰することができない事由で期間を守れなかった場合、その事由が消滅した日から2ヶ月以内に手続を追後補完することができる。
10.2 請求期間の満了日から1年を過ぎた後は、追後補完できない。
10.3 2017年2月28日までに従前の追後補完期間が経過した場合には従前の規定による。
執筆者
特許部
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