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商標判例読解48 「TWG TEA」事件判決(並行輸入と商品の小分け)

著者など 青島 恵美    ユアサハラ法律特許事務所/商標判例研究会
業務分野 商標
出版日 平成29年4月12日
掲載誌・出版物 特許ニュースNo.14423
出版社 一般財団法人 経済産業調査会

概要

当事務所・商標判例研究会による連載「商標判例読解」の第48回

事件番号:知財高裁平成27年(ワ)第29586号
事件名:商標権等に基づく差止等請求事件
係属部:東京地方裁判所民事第46部(長谷川 浩二(裁判長)、萩原 孝基、中嶋 邦人)
判決日:平成28年11月24日
関連条文:不正競争防止法2条1号又は2号、商標法36条1項、2項又は不正競争防止法3条1項、2項、商標法39条、特許法106条又は不正競争防止法14条、民法709条、商標法38条2項又は不正競争防止法4条、5条2項

第1 事案の概要

下記原告商標につき商標権を有するティーダブリュージー ティー カンパニー ピーティーイー リミテッド(以下、「原告」という。)が、株式会社ジュピターインターナショナルコーポレーション(以下、「被告」という。)による下記被告標章を付した被告商品の輸入販売が上記商標権を侵害し、原告の商品等表示として周知又は著名な原告商標と同一の商品等表示を使用したものであって不正競争防止法2条1項1号(周知表示誤認混同惹起行為)又は2号(著名表示冒用行為)の不正競争に該当すると主張して、①商標法36条1項、2項又は不正競争防止法3条1項、2項に基づき(主位的に商標法、予備的に不正競争防止法に基づく。以下同じ。)被告商品の輸入販売の差止め及び廃棄、②商標法39条、特許法106条又は不正競争防止法14条に基づき謝罪広告の掲載、③民法709条、商標法38条2項又は不正競争防止法4条、5条2項に基づき損害賠償金等の支払をそれぞれ求める事案である。

【原告商標】

登録番号:第5340591号(当該商標権を、以下「本件商標権」という。)
TWG
商標:(当該商標を、以下「原告商標」という。)
出願日:平成21年4月14日
登録日:平成22年7月23日
指定商品:第30類「紅茶、フルーツティー、チャイティー、ルイボス茶、緑茶、日本茶、ウーロン茶   (中国茶)、茶、茶エキス、煎じ用茶、ケーキ、ペストリー菓子、ペストリー(生地)、マカロン(ペストリー菓子)」
(その他の区分(第21類及び第43類)については省略。)

【被告商品】

TWG2[1]

(上記商品を、以下「被告商品」といい、上記商品中枠で囲んだ文字及び図形部分を、以下「被告標章」という。)

第2 裁判所の判断

被告は、被告標章が原告商標と同一であること及び被告商品が本件商標権の指定商品に含まれることを争っていないため、本件における主な争点は、被告による被告商品の輸入販売行為は、真正商品の並行輸入に該当し、権利侵害の違法性が阻却されるか否かである。

裁判所の事実認定によると、被告商品は、密封された包装袋の中に紅茶の茶葉が入った綿製のティーバッグが納められたものであり、輸入時において、種類別に200個ずつ段ボール箱に詰められていた。この箱には原告の会社名等を記載したラベルが貼付されているが、箱自体はビニール等で覆われていない。また、箱内に間仕切りや中箱等はなく、200個の被告商品が詰め込まれていた。被告は、箱詰めされていた被告商品を20個ずつ透明のビニール袋に詰めた上、品名、原材料名、内容量、賞味期限等を記載したシールを同袋に貼付して販売した。なお、原告が我が国で販売する商品は、透明のビニールで包装された化粧箱の中に被告商品の包装袋と同一の外観を有する包装袋が詰められており、密封された上記包装袋の中に紅茶の茶葉が入った綿製のティーバッグが納められている。

上記争点につき、裁判所は、「①被告商品は、原告から本件第三者及びアーバン社を経て被告が輸入し、外観及び内容が変えられることなく販売されたものであり、原告が我が国で販売する商品と包装袋の外観及びその内容物が紅茶のティーバッグである点で同一であることが明らかである。加えて、②原告商標と被告標章は……同一であること、③原告商標の商標権者が原告であること……を併せ考えれば、被告商品の包装袋に記載された被告標章は原告が付したものであって我が国の登録商標である原告商標と同一の出所を表示するものと認められる。また、上記①によれば被告商品は原告において製造されたままの状態で流通されたものであるから、被告商品の品質管理を原告が直接的に行い得ると認められる。そうすると、被告商品と原告が販売する商品とが原告商標の保証する品質において実質的に差異がないということができるから、被告商品の輸入及び販売は、いわゆる真正商品の並行輸入として、商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。同様に、仮に被告商品の輸入及び販売が不正競争防止法2条1項1号ないし2号の不正競争行為に該当し、原告の営業上の利益が侵害されたとしても、実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。」と判示した。

また、裁判所は、原告の「原告が販売する真正商品はティーバッグを入れた化粧箱をビニールで包装した高級品であるのに対し、被告が販売したものは被告商品をプラスチック又はビニール製の透明袋に入れたものであり、高級品であるという印象がないこと、被告の貼付した食品表示の内容を原告が管理し得ないこと、被告による小分け、詰め替え及び再包装の過程で異物が混入したり品質が変化したりするおそれがあることから、原告商標によって保証する商品の品質に対する信用を害する。」との主張に対し、以下の通り判断し、当該主張を退けた。
「原告商標が保証するのは……紅茶その他の指定商品及び指定役務に係る品質であるところ、商品が高級品であるといった印象や食品表示の記載は原告商標が保証するものに当たらず、上記指定商品等の品質に直ちに影響しない。また、前記……のとおり被告商品は密封された包装袋内に茶葉が納められたものであって、被告はこれを段ボール箱から取り出した上、20個ずつ透明な袋に入れたというにとどまり、被告商品それ自体には改変を加えていないから、その包装方法によって紅茶の品質が直ちに影響するとは考え難い。なお、本件の証拠上、原告が化粧箱に詰めて販売する商品と被告が上記のように包装した被告商品がその包装方法あるいは流通、保管等の状況により紅茶(茶葉)としての品質を異にしていることはうかがわれない。」

以上の理由から、裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。

本稿は、「TWG TEA」事件を題材として、商標法の保護対象や商品の小分けについて検討したものである。

なお、記事の全文は「特許ニュース」No.14423(平成29年4月12日号)をご覧ください。

[1] 出典:本事件の判決書

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