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商標判例読解42 「REEBOK ROYAL FLAG」事件判決(著名商標を含む結合商標の類否)

著者など 青島 恵美    ユアサハラ法律特許事務所/商標判例研究会
業務分野 商標
出版日 平成28年9月15日
掲載誌・出版物 特許ニュースNo.14287
出版社 一般財団法人 経済産業調査会

概要

当事務所・商標判例研究会による連載「商標判例読解」の第42回

 

事件番号:知財高裁平成27年(行ケ)第10158号

事件名:審決取消請求事件

係属部:知財高裁第4部(髙部 眞規子(裁判長)、柵木 澄子、鈴木 わかな)

判決日:平成28年1月20日

関連条文:商標法4条1項11号

 

第1 事案の概要

 

リーボック インターナショナル リミテッド(以下、「原告」という。)が本願商標について出願したところ、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似するものであるから、商標法4条1項11号に該当するとして、平成26年9月10日付けで拒絶査定を受けたため、同年12月15日、拒絶査定に対する不服の審判(不服2014-25615号)を請求した。本件は、これに対し特許庁が請求棄却審決をしたことから、原告がその取消しを求める事案である。

 

【本願商標】

商願2013-51910号

商標:REEBOK ROYAL FLAG(標準文字)

出願日:平成25年7月4日

指定商品:第25類「履物,運動用特殊靴,帽子・その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服,運動用特殊衣服」

 

【引用商標】

登録番号:第5532571号

商標:Royal Flag

出願日:平成24年5月2日

登録日:平成24年11月2日

指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」

 

第2 裁判所の判断

 

本件においては、本願商標中「ROYAL FLAG」部分のみを抽出して引用商標と比較すべきか、が問題となった。

この点について、裁判所は、本願商標全体が1行でまとまりよく表されており、その外観上、「ROYAL FLAG」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない点、本願商標中「REEBOK」の文字部分は、原告の商号の略称又はその展開するブランドの名称、あるいは、その業務に係る商品の出所を表示する商標として本件審決時に我が国の取引者、需要者の間で広く知られており、当該文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるため、本願商標中「REEBOK」の文字部分が分離観察されるのに対し、「ROYAL FLAG」という一連の語は、既成語として辞書に掲載されているものではないが、一般的な英単語をつないだものにすぎず、それ自体が自他商品を識別する機能が全くないというわけではないものの、「REEBOK」の文字部分との対比においては、取引者、需要者に商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではない点、等を考慮し、引用商標との類否判断において「ROYAL FLAG」部分のみを抽出すべきではないと判示した。

その上で、裁判所は、本願商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念において相違することに加え、取引の実情をも考慮すれば、本願商標と引用商標とが、同一又は類似する商品に使用されたとしても、取引者、需要者において、その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない、本願商標は、引用商標に類似しないというべきであるから、本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断には誤りがあり、原告の取消事由に係る主張は、理由がある、と判示した。

なお、知財高裁平成27(行ケ)第10159号(知的財産高等裁判所第4部)においても、原告の出願に係る下記商標と本件の引用商標の類否が問題となっており、当該事件においても、本件と同様の判断がなされている。

 

商願2013-51911号

商標:Royal Flag2

出願日:平成25年7月4日

指定商品:第25類「履物,運動用特殊靴,帽子・その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服,運動用特殊衣服」

 

第3 検討

 

本件判決は、過去の最高裁判決が示した結合商標の類否に関する判断基準に従ったものと思われるが、商品の取引の実情や、商標の「横取り(著名商標「A」の所有者が他人の先願登録商標「B」を取り込んだ結合商標「A+B」について権利取得することにより、あたかも当該他人の商標「B」を自己の手中に収めるかのような効果)」[1]という観点からの検討が不十分であるような印象を受ける。また、その結果、「著名商標さえ付しておけば商品の出所の混同が起きることはない」という結論ありきであったような印象が否めない。

本稿は、「REEBOK ROYAL FLAG」事件を題材として、著名商標「A」を含んだ結合商標「A+B」と他人の商標「B」について併存登録を認めた場合に起こり得る弊害について検討したものである。

 

なお、記事の全文は「特許ニュース」No. 14287(平成28年9月15日号)をご覧ください。

 

[1] 後藤晴男「著名商標との結合商標の類否」特許研究18号35~48頁、土肥一史「商標法の研究」(中央経済社、2016年)125~141頁

 

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