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機能性を有する製品の外観をトレードドレスで保護することは難しい -Apple Inc. v. Samsung Electronics Co. Ltd. et. Al.(2015年5月18日CAFC判決,(Fed. Cir. 2015) No. 2014-1335, 2015-1029)

 

森下 梓弁護士,外国特許情報委員会

第1. 経緯

Apple Inc.は、当時の主力製品であるiPhone 3G及び3GSに関連する同社の特許、意匠及びトレードドレスの侵害を主張して、Samsungに対し、2011年4月、北カリフォルニア連邦地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。

地裁はAppleの主張を全面的に認め、6億3940万3248ドルの損害を認定した。

これに対して、Samsungが、トレードドレスの保護性等に関する判断に誤りがあると主張してCAFCに控訴した [注1]。

第2. CAFC判断の概要

CAFCでは、iPhoneに関連するトレードドレスの機能性が争われた。トレードドレスとは、製品あるいはその包装の視覚的な外観の特徴をいう。米国において、トレードドレスは一般の商標と同様に保護されるが、それが機能的である場合には保護されない。商標法は特許法と異なり権利の永続的な独占を許すものであるから、製品の物理的な外観を保護する際には、その保護範囲は非機能的な部分に限定されるべきであるとされている [注2]。

CAFCは、Appleの主張する2件のトレードドレスがいずれも機能的であると判断し、同トレードドレスが保護に値するとの原審判断を破棄して審理を地裁に差し戻した。

第3. 判決のポイント

トレードドレスによって製品外観の保護を求めることは難しい。最高裁及び連邦巡回区裁判所は、機能性を理由としてトレードドレスの保護を繰り返し否定している。TrafFix事件 [注3]では、一時的な道路方式のための二重バネのデザインに関するトレードドレスが機能的であると認定された。Secalt事件 [注4]では、ホイストのデザインに関するトレードドレスが機能的であったと認定された。

機能性の判断に関して、TrafFix最高裁判決は、「物品の使用又は目的に不可欠であるかどうか、又は物品のコスト又は品質に影響を与えるかどうか」という基準を主要なテストとして位置付けている。この基準によれば、前段の不可欠要件はともかくとして、後段については、専らデザインのために選択された要素でなければ、幅広く機能性を有するとの認定がなされる余地がある。さらに、製品の使用や目的に不可欠とまでは言えなくとも、保護により何らかの競争阻害効果が発生すれば、それだけでその特徴は機能的であると述べる裁判例もある [注5]。

製品外観の保護は、一義的には意匠で図るべきであり、トレードドレスによる保護は、装飾的要素の高い形状に限って保護されると認識しておく必要がある。

[注1] その他、Appleは地裁判決に基づいて差止命令を求めたため、この点に関連して別途訴訟が存する。詳細は国際商事法務Vol.42, No.5(2014) P800以下
[注2] Qualitex Co. v. Jacobson Prods. Co., 514 U.S. 159, 164-65 (1995)
[注3] TrafFix, 532 U.S. at 26-27, 35
[注4] Secalt S.A. v. Wuxi Shenxi Const. Mach. Co., 668 F.3d 677, 687(9th,2012)
[注5] Brunswick Corp. v. Spirit Reel Co., 4 U.S.P.Q.2d 1497, 1501 (10th Cir. 1987)

執筆者

特許部

外国特許情報委員会

[業務分野]

特許

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