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特許・実用新案の審査基準と審査ハンドブックの改訂 – 2015年10月1日以降の審査に適用

泉谷玲子 弁理士
国内特許情報委員会

改訂特許・実用新案審査基準及び改訂特許・実用新案審査ハンドブック

(1)特許庁は、2015年9月18日に改訂特許・実用新案審査基準(「改訂審査基準」)及び改訂特許・実用新案審査ハンドブック(「改訂ハンドブック」)を公表した。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_kijun.htm http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/handbook_shinsa.htm

改訂審査基準及び改訂ハンドブックは、2015年10月1日以降の審査に適用される。今回の改訂は、(新)産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会審査基準専門委員会ワーキンググループでの審議結果を受けて、よりわかりやすい審査基準及びハンドブックの策定を目指して行われたものである。

(2)審査基準は、特許法等の関連する法律の適用についての特許庁の基本的な考え方をまとめたものである。審査基準の主な改訂事項は以下の通りである。

旧審査基準中の「第IX部審査の進め方」が新たに「第I部審査総論」に組み替えられた。

2015年6月5日の最高裁判決(平成24年(受)1204号、同2658号)を受けて、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの明確性要件に関する記載が修正された[第II部第2章第3節4.3.2]。物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合は、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であるという拒絶理由が通知される。なお、拒絶理由に対する対応の1つとして出願人は「不可能・非実際的事情」の主張・立証を行うことができるが、その参考例が、平成27年11月25日付で特許庁より公表された。

サブコンビネーション発明に関する発明、特に、サブコンビネーションの発明を「他のサブコンビネーション」に関する事項を用いて特定しようとする記載がある場合の、明確性要件及び新規性の考え方が明記された[第II部第2章第3節4.2、第III部第2章第4節4]。

「進歩性が否定される方向に働く諸事情及び進歩性が肯定される方向に働く諸事情を総合的に評価すること」が明記された[第III部第2章第2節]。「進歩性が否定される方向に働く事情」とは、「主引用発明に副引用発明を適用する動機付けがある場合」、「主引用発明に設計変更等の示唆がある場合」、「先行技術の単なる寄せ集めにすぎない場合」などである。「進歩性が肯定される方向に働く事情」とは、「有利な効果」、「阻害要因」がある場合、などである。

新規性喪失の例外に関する審査基準[第III部第2章第5節]が新設された。出願人が新規性喪失の例外適用の可否について知ることができるように、審査官は、一回目の審査に着手する際に、新規性喪失の例外の適用について必ず判断することとなった。

不特許事由(公序良俗等違反)に関する審査基準[第III部第5章]が新設された。

旧「第VII部特定技術分野の審査基準」(コンピュータ・ソフトウェア関連発明、生物関連発明、医薬発明)が「特許・実用新案審査ハンドブック」に移行された。

(3)審査ハンドブックは特許庁が審査業務を遂行するに当たって必要となる手続的事項や留意事項をまとめたものであり、審査基準で示された基本的な考え方を理解する上で有用な事例・裁判例・適用例も掲載されている。

改訂審査ハンドブックの、第Ⅰ部審査総論~第X部実用新案までは審査基準と同じ構成で、審査基準の各部に関連する手続事項、留意事項を記載している。第XI部は、「業務一般」に関する。ハンドブックには本文の他に附属書A-Dが附属されている。附属書Aは、旧審査基準において項目毎に記載されていた事例を「事例集」としてまとめたものである。附属書B「特定技術分野への適用例」は、旧審査基準の「第VII部特定技術分野の審査基準」を移行したものである。第1章 コンピュータ・ソフトウェア関連発明、第2章 生物関連発明、第3章 医薬発明の各章の最初に各発明の定義、各章で用いられる用語の定義がまとめられている。附属書A及び附属書Cにおいて、事例が旧審査基準中よりも100以上と大幅に追加された。附属書Cは、「実用新案技術評価書作成のためのハンドブック」、附属書Dは、「審判決集」である。

旧審査ハンドブックは、特許庁の審査の取り扱いに関する手続的な事項が多く、審査基準と比較すると出願人が参照する機会は少なかったと解する。改訂審査ハンドブックは、附属書類を含めて実体的な内容を含むため、出願人も十分に理解しておく必要がある。

なお、特許権存続期間延長登録出願に関しては、2015年11月17日付の最高裁判決(平成26年(行ヒ)356号)を受けて審査基準については改訂が検討されており、平成28年春頃を目処に公表される見込みである。
https://www.yuasa-hara.co.jp/lawinfo/2532/

(新)産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会審査基準専門委員会ワーキンググループではさらに、食品の用途発明に関する審査基準の改訂も検討されており、その動向も注目される。

 

執筆者

特許部化学班パートナー 弁理士

泉谷 玲子 いずみや れいこ

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