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米国: 特許法改正

小野 達己弁理士

2011年 3月 8日に米国上院は特許法改正法案 S.23を可決し、その後 6月 23日に米国下院が特許法改正法案H.R.1249を可決したが、上院法案と下院法案には少なからず相違点があった。そのため、法案成立には、下院法案を上院にて再可決するか、同一内容に調整した法案を上院、下院にて再可決する必要があったが、結局、9月 8日に上院が下院法案を補正なしで再可決し、9月 16日にオバマ大統領が同法案に署名し、改正特許法が成立した。以下、主な改正点を概説する。

[1]先願主義
先願主義への変更は、米国実務を諸外国の特許実務に調和させるものである。また、販売や公用による新規性喪失の事由について、外国での事由を含むように改正される。

(1)有効出願日
先行技術、先後願の基準となる「有効出願日(effective filing date)」が定義され(101条(i)(1))、先願主義が導入される。なお、後述するように、一定期間における発明者自身等による公表の場合に先行技術とならない例外規定がある。有効出願日は、以下の(A)又は(B)の何れかで決まる。
(A)実際の米国出願日、又は
(B)119条(優先権主張出願)、365(a)(国内移行出願)、(b)(国際出願)又は 120条(継続出願)、121条(分割出願)又は365(C)(国際出願の継続出願)の出願日
改正法案によれば、第 1国出願が日本出願で、パリ優先権等により米国出願する場合、米国出願の有効出願日は日本出願日となる。102条(e)(新 102条(a)(2))による後願排除効も有効出願日である日本出願日を基準として判断される。102(e)の後願排除効を実際の米国出願日とするヒルマードクトリンは適用されなくなる。

(2)新規性(102条)
102条(a)は、以下のように、「有効出願日」を基準に判断するように修正される。
「102条(a):下記の場合を除いて特許の権利がある:
(1)クレーム発明は、その有効出願日前に、特許になっていたか、印刷刊行物に記載されていたか、公然使用されていたか、販売されていたか、あるいは公衆に利用可能であった場合;又は
(2)クレーム発明は、その有効出願日前に他者によって出願され、151条により発行された特許又は 121条(b)により公開若しくは公開されたとみなされる出願に記載されている場合」
そして、102条(b)において、102条(a)(1)及び(2)それぞれの先行技術の例外が、以下のように規定されている。

(1)102条(a)(1)の先行技術の例外:先行技術による開示(disclosure)が、クレーム発明の有効出願日の前の 1年以内になされた場合で、且つ以下の(A)又は(B)の何れかに該当する場合には、102条(a)(1)の先行技術にならない。(A)開示が、発明者、共同発明者、又は、発明者若しくは共同発明者から開示された主題を直接又は間接的に取得した他の者によってなされた場合;又は(B)開示された主題が、その開示前に、発明者、共同発明者、又は、発明者若しくは共同発明者から開示された主題を直接又は間接的に取得した他の者によって公表(publicly disclose)されていた場合。
(2)102条(a)(2)の先行技術の例外:先願に係る出願ないし特許中の開示は、以下の(A)~(C)の何れかに該当する場合には、102条(a)(2)の先行技術にならない。
(A)先願に開示された主題が、発明者又は共同発明者から、直接ないし間接的に得られていた場合;又は
(B)先願に開示された主題が、有効出願日前に、発明者、共同発明者、又は、発明者若しくは共同発明者から開示された主題を直接又は間接的に取得した他の者によって公表されていた場合;又は
(C)先願に開示された主題、クレーム発明が、その有効出願日以前に同じ者によって保有されていたか、あるいは同じ者に譲渡される義務があった場合。

(3)非自明性(103条)
先願主義導入にともない自明性の基準日は、発明日ではなく、有効出願日となる。103条(a)は、以下のように、従前の「発明日」から「有効出願日」に修正される。
「クレーム発明が、たとえ 102条に規定したように同一に開示されていない場合であっても、クレーム発明と先行技術との間の差異が、クレーム発明が全体として有効出願日より前に当業者にとって自明であるような場合は、クレーム発明は特許を受けることができない。」

[2]第三者による情報提供
現行の情報提供制度では、第三者による先行技術の提出は、出願公開日から 2月以内または許可通知日のいずれか早い方までに行う必要があり、先行技術の説明も提出できない。改正法案では、これらの点が改善されており、提出期間が拡大され、先行技術の説明が提出可能になる。新規に追加される 122条(e)によれば、第三者は、(A)特許許可通知日、又は(B)公開後 6月又は 132条の最初の拒絶の日の遅い方、の何れか早い方より前に、先行技術を提出することができる。情報提供には、提供資料の関連性の簡単な説明、及び、情報提供がこの条文に規定する要件を充足しているという供述を含めなければならない。

[3] 付与後異議申立(Post-Grant Review)(321条-329条)
現行の再審査手続では、特許や刊行物記載のみによる先行技術に基づいて特許性についての実質的な新たな疑問が生じる場合にのみ審査対象とされていたが、特許付与後異議申立により、無効理由の範囲が大幅に拡大され、ディスカバリーも導入される。付与後異議申立手続は、審判官(The Patent Trial and Appeal Board)により審理される(326条)。付与後異議申立制度では、特許又は再発行特許の発行後 9月以内に申立をしなければならない(321条)。無効理由の範囲には、101条、102条、103条、112条の理由が含まれ(282条(b)(2)、(3))、刊行物以外の新規性喪失の事由、実施可能要件、不明確性の理由も含まれる。申立人は利害関係者でなければならず、名前を開示する必要がある(322条(a)(2))。申立書では、無効を求める各クレーム、無効の理由、及び証拠を明確に特定する必要がある(322条(a)(3))。証拠として、特許又は印刷刊行物のコピーを添付し、また、鑑定等を証拠とする場合には宣誓書を提出する必要がある。特許権者は、特許商標庁長官が設定する期間内に予備的反論を提出する権利を有する(323条)。付与後異議申立手続が開始される基準としては、申立書に示される情報が反証されなければ、特許の少なくとも 1つのクレームが、特許性があることよりないことの方が強いこと(more likely than not)を示す必要がある(324条(a))。特許商標庁長官は、(1)予備的反論の受領日又は(2)予備的反論が提出されない場合には提出可能な最後の日から 3月以内に審理を行うか否か決定する。この決定に対しては不服申し立てできない。付与後異議申立において、特許権者は、クレームをキャンセルし、合理的な数の代替クレームを提案する補正を原則 1回行うことができる(326条)。クレームの範囲の拡張、及び新規事項の追加は禁止される。なお、和解を促進する場合や、特許権者に正当理由がある場合等には、更なる補正が認められることもある。
付与後異議申立手続において当事者が提起した事項及び合理的に提起できたはずの事項には、エストッペルが適用される(325条(e))。但し、最終的な判断がでる前に和解した場合には、エストッペルの適用はない(327条)。特許無効訴訟後を提起した後は付与後異議申立を提起できず、付与後異議申立後に無効訴訟を提起した場合には、無効訴訟は中断する(325条(a))。

[4] 当事者系レビュー(Inter Partes Review)(311条-319条)
従来の当事者系再審査が当事者系レビューに置き換わる。当事者系レビューは、審判官(The Patent Trial and Appeal Board)により審理される(316条)。特許又は刊行物に基づく 102条又は 103条を根拠として特許の 1又は複数のクレームの取り消しを要求できる(311条)。当事者系レビューは、(1)特許又は再発行特許の発行から 9月後か、②付与後異議申立があったときはその終了後のいずれかの何れか遅い方の後に申立が可能である(311条)。申立人は利害関係者でなければならず、名前を開示する必要がある(312条(a)(2))。申立書では、無効を求める各クレーム、無効の理由、及び証拠を明確に特定する必要がある(312条(a)(3))。証拠として、特許又は印刷刊行物のコピーを添付し、鑑定等を証拠とする場合には宣誓書を提出する必要がある。特許権者は、長官が設定する期間内に予備的反論を提出する権利を有する(313条)。登録後レビューが開始される基準としては、申立人が特許の少なくとも 1つのクレームについて勝訴する合理的な見込み(reasonable likelihood)があることであり、付与後異議申立手続を開始する基準よりも若干高い基準を採用している。特許商標庁長官は、(1)予備的反論の受領日又は(2)予備的反論が提出されない場合には提出可能な最後の日から 3月以内に登録後レビューを行うか否か決定する。この決定に対しては不服申し立てできない。登録後レビューにおいて、特許権者は、クレームをキャンセルし、合理的な数の代替クレームを提案する補正を原則 1回行うことができる(316条)。クレームの範囲の拡張、及び新規事項の追加は禁止される。なお、両当事者からの要求等により、更なる補正が認められることもある。
当事者系レビューにおいて当事者が提起した事項及び合理的に提起できたはずの事項には、エストッペルが適用される。但し、最終的な判断がでる前に和解した場合には、エストッペルの適用はない(317条)。特許無効訴訟を提起した後は当事者系レビューを提起できず、当事者系レビュー後に無効訴訟を提起した場合には、無効訴訟は中断する(315条)。また、特許侵害訴訟の訴状を受理してから1年を越えた場合、当事者系レビューを申立できない。

[5]補充審査(Supplemental examination)
特許権者が、クレームの問題点や不公正行為を是正できるようにするために補充審査を導入する(257条)。特許権者は、特許に関連すると考える情報を考慮、再考または訂正してもらうために、補充審査を請求することができる。請求に係る少なくとも 1つの情報が、実質的な特許性の新たな疑義を生じる場合は、長官が再審査を命じる。補助審査で情報が考慮、再考または訂正された場合は、その情報は特許権の行使に影響を与えない。

[6]ベストモード(Supplemental examination)
282条において、特許クレームが無効、権利行使不能となる理由からベストモード要件違反が除外された(282条)。112条のベストモード要件自体には変更はない。

執筆者

特許部機械班アソシエイト 弁理士

小野 達己 おの たつき

[業務分野]

特許

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